文庫本のカバーと帯は、どうつくる?(『怪奇がたり』の例)
7月新刊の城島明彦『怪奇がたり』(扶桑社文庫)の表紙(カバー)です。クリックすると拡大できます。
本の表紙の絵やイラスト、タイトルを決めるのは、出版社の編集者の仕事です。
本文の見出しの大きさ、一行あたりの文字数、一ページの行数、活字の大きさも、編集者が決めます。
本に巻かれる帯の文章も、編集者が書きます。
本のカバーの裏表紙には、編集者が作品のなかで一番印象的と思った個所が、次のように抜粋してあります。
…ある夜、何かが顔面に触れた。髪の毛だった。
覆いかぶさるようにして、岡野を頭のほうから覗きこんでいたのだ。
髪は生き物のように蠢(うごめ)き、指に絡みついてきた。
岡野が手を引くと髪がごそっと抜け、佳乃子の姿はかき消えた。
(夢だったのか)と思ったが、佳乃子のものとしか考えられない数十本の
毛髪が右手にしっかりと握られ、髪の根元に血にまみれた頭皮までくっついていた……
岡野は全身に鳥肌が立つのを感じた。 (「顔」より)
『怪奇がたり』の帯は、「怪奇」という色と同じ紫色で、そこには次のように書かれています。
読んでしまったら
一人では
眠れない!
あなたのすぐ
近くにある
怖い話。
文字の色は、「怖い話。」のところだけが黒で文字サイズも大きくなっていますが、それ以外は白抜きです。
帯の裏表紙のところの色は白で、そこには、同じ扶桑社から去年出た『恐怖がたり42夜』の帯つきの写真が載っています。
「『怪奇がたり』を読んだら、これもぜひ」というPRですね。
ついでに、『恐怖がたり42夜』のカバーの裏表紙に載っている文章を紹介しましょう。
…黄泉比良坂(よもつひらさか)に静けさが戻ると、点滅する淡い黄緑色のイルミネーションが暗闇のなかに浮かび上がった。
おびただしい数の源氏ボタルが群がって創り出した神秘的な〝人形(ひとがた)をしたイルミネーション〟は、秋吉と夏帆の半焼けの死体のほかに、もう一体あった。
二人の間に横たわる、首にへその緒を巻きつけた小さな肉塊であった。 (「第1夜 「黄泉比良坂」より)
まだ読んでいない人で、 「もしかしたら、面白いかもしれない」と思った方は、ぜひどうぞ。
(城島明彦)