「べらぼう」の過去最低の初回視聴率は、「いだてん」の呪いと見た!
「案の定」というべきか? 「意外」というべきか?
12・6%――1月5日から始まった大河ドラマ「べらぼう」の視聴率が過去最低を記録したと各紙が報道した。
ビデオリサーチ調べの東京地区の数字だが、筆者は、大河ドラマ便乗本(『江戸の仕掛人 蔦屋重三郎』)を出版していることもあり、過去に例のない〝江戸出版界の寵児〟を主人公にしたNHKのチャレンジングスピリットにひそかに期待していた。
それだけに、「やはりダメなのか」という失望感に捉われてしまった。
いや、〝悪い予感〟のようなものは、同じく〝NHKを代表する伝統的番組〟昨年大みそか恒例のイベント「紅白歌合戦」が過去2番目の低さだったと知ったときからあった。
「いだてん」の呪いか? 「噺」の語が招く「低視聴率」の悪夢
悪い予感以前に〝嫌な予感〟がしたのは、1年以上も前である。
NHKが「2025年の大河ドラマは『べらぼう』」と発表したときで、副題を見て、そう思ったのだった。
「べらぼう」の副題とは「蔦重栄華乃夢噺」(つたじゅうえいがのゆめばなし)。
そのどこが気になったのかというと、「ばなし」と読む漢字8文字の最後の「噺」という字である。
「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」
「いだてん~東京オリムピック噺~」
この2つ、表現が似ていないか。
【類似点1】 副題の「噺」が共通し、題名も平仮名4文字で似ている。
【類似点2】 副題に「噺」がついた大河ドラマは、64作中、この2作しかない。
「いだてん」は東京五輪に照準を合わせて制作されたが、コロナ禍で1年延期はされるは、無観客で強行されるわで、悪夢五輪となってしまったことは誰もの記憶に新しい。早い話が「縁起が悪い」のだ。
にもかかわらず、まるで
「悪夢よ、もう一度」
と願ってでもいるかのような、似たような題名の付け方は、それこそホラーじゃあ~りませんか。
「そんなのは偶然」というかもしれないが、ちっとは〝ゲンかつぎ〟を意識すべきだったのでは?
自信を持つのは悪いことではないが、「弘法も筆のあやまり」というではないか。
大げさな言い方をすれば、「神経を疑わざるを得ない」ということになる。
「光る君へ」の余波も重なり、先行き不安
2019年放送「いだてん」の初回視聴率は、前年の林真理子原作「西郷どん」より0・1ポイント低かっただけだったが、回を追うにつれてガタガタになり、終わってみれば、(全放送の)平均視聴率で過去最低の8・2%を記録した。
「こんなひどい数字は今後二度と出ないだろう」と思っていたら、さにあらず、昨年の「光る君へ」が平均視聴率10・7%を記録。歴代ワースト2位となった。
「光る君へ」の初回視聴率は12・7%で、その前年の「どうする家康」の15・4%より2・7ポイントも低かった。
女性を主人公にしたのは、2017年の「おんな城主直虎」以来で、7年ぶりだったが、平均視聴率比較では「おんな城主直虎」が16・9%だったのに対し、「光る君へ」は12・7%と大差をつけられてしまった。
ところが、「べらぼう」の初回視聴率は、その「光る君へ」をも0・1ポイントではあるが下回り、ドラマが始まったばかりなのに、早くも危険信号がともってしまった。
視聴率がコケた原因はコレだ!
都内文京区に住む筆者の友人で、居住区の図書館が蔵する映画のDVDはすべて借りつくした男が、いみじくもこういった。
「蔦重だけどね。大河ドラマべらぼうの第1回、吉原炎上の冒頭場面は迫力があって素晴らしかったけど、あとがいけない。渡辺謙演じる田沼意次(おきつぐ)と蔦重が面会するべらぼうな場面。意図はべらぼうだからわかるけど、ネットでも散々コケにされていた。ぼくもあれは酷いと思った。ドラマだから何も史実にない場面があってもいいんだけど、許容範囲ってもんがあるな。あれでは一気に損なわれるべらぼうだと思った。視聴者に媚びている」
言い得て妙。筆者も「ここまでやるか」と思った。というのも、
江戸時代を江戸時代たらしめているのは、
士農工商という身分制度。こいつを無視している。
商人は、一番下の身分なのだ。
すれ違いざま、庶民が武士の腰に差した刀の鞘にありでもすれば、「無礼打ち」にされても文句はいえない。
蔦重のように、田沼意次のような地位の高い武士に直訴すれば、打ち首にされてしまう。
江戸時代のそういう基本ルールは、きちんと押さえておかないといけない。
それを守らないのは、今なら「高速道路を逆走するようなもの」といったら、言い過ぎか。
ただでさえ暗い話があふれ返っている今の日本をもっと明るくするために、大河ドラマ関係者たちは、男女を問わず、スタッフ・俳優を問わず、悪い流れが続かないように、ここはひとつ、ふんどしを引き締めてもらいたいものだ。
そこのオカン、「呪い」をなめたらイカンぜよ!
〽もしもしカメよ カメさんよ
世界のうちで お前ほど
歩みののろい ものはない
の「のろい」じゃないのだぞ。
(城島明彦)
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