「どうする家康」の人気イマイチを「どうするNHK」?
どうする「期待を裏切る視聴率推移」
私個人としては、『家康の決断』という本を出版しているので、大河ドラマ「どうする家康」の人気がよくないと本の売れ行きにも影響して困るのだが、ビデオリサーチによる視聴率(関東地区)の推移はイマイチだ。
放送開始から3ヵ月の月別平均視聴率の推移は、14・85%→12・85%→10・22%と下落の一途をたどっており、「視聴者の当初の期待を裏切らるドラマ展開となった」ということになる。
▽1月 平均視聴率 14・85%
1回 (1/8) どうする桶狭間 15・4%
2 (1/15) 兎と狼 15・3
3 (1/22) 三河平定戦 14・8
4 (1/29) 清州でどうする 13・9
▽2月 12・85%
5 (2/5) 瀬名奪還作戦 12・9
6 (2/12) 続・瀬名奪還作戦 13・3
7 (2/19) わしの家 13・1
8 (2/26) 三河一向一揆 12・1
▽3月 10・22%
9 (3/5) 守るべきもの 11・8
10 (3/12) 側室をどうする 7・2 ※WBC(侍ジャパン)中継の影響
11 (2/19) 信玄との密約 10・9
12 (2/26) 氏真 11・0
例年の大河と違って、「どうする家康」では、少年時代から始めず、いきなり「桶狭間の戦い」からスタートしたのは新鮮に映り、「家康と信長がどう絡むのか」という点にも視聴者は関心をもったことが放送内容から推測できる。
「回想シーンの多用」は「映画的」で悪くない
「回想シーンが多い」という批判がある。
時系列に沿って物語が展開するテレビドラマを見慣れている若い視聴者の目にはそのように映るようだが、私はそうは思わない。
構成上のテクニックとして回想を多用するのは「映画的な手法」を取り入れているからで、悪くはない。だが、視聴者に「多い」と思わせてしまうのは、「脚本の練り方」ないしは「演出技法」に問題がある。
その場面で、読者の意識をドラマからたとえ一瞬でも離れさせてしまわないようにするのが、脚本家と演出家の腕なのだから。
家康以外の人物描写に時間をかけすぎ
「どうする家康」は、家康以外の人物も深く描いており、それはそれで面白いが、必ずしも家康とその人物と絡んではいない場面も多く、そうすればするほど、家康の存在感は薄れることになる。その点に問題があった。
「主人公がどうする」「主人公がどうなる」と思って視聴者はドラマを観ているのだから、主人公が長い間、出てこない場面が続けば、視聴者は「面白くない」と思ってしまう。
そういう問題があるので、過去の大河ドラマでは、無理に主人公を絡ませる場面を作ろうとして史実を無視したり、主人公に立ち聞きさせたりする手法を使うなどしたが、そんな設定は安易で邪道というより、やってはならないことだ。
失敗しても飛ばされない制作統括プロデューサー
「どうする家康」の制作統括プロデューサーは、汚い場面として視聴者にそっぽを向かれ、史上空前の大失敗作といわれ、大河ドラマ史上で「歴代ワースト2」の低視聴率をたたき出した「平家物語」を手掛けた人物と知って、驚いてしまった。
民間企業なら、「信賞必罰」で、どこかに飛ばされ、〝冷や飯組〟になってるはずだが、NHKではそういうことはなく、以後もプロデューサーとして継続して仕事をしてきた。
こういう微温湯的な体質が大河ドラマの視聴率を上げる大きなマイナス要因になっているのではないだろうか。
どこかズレているNHK大河ドラマ班
大河ドラマの歴代ワーストナンバーワンは、年間の平均視聴率が〝恐怖の8・2%〟という2019年の「いだてん~東京オリムピック噺」で、東京五輪に便乗するつもりの安易な企画がたたったといえなくもなかったが、大河ドラマの定番である「時代劇」ではない素材にチャレンジした点は大いに評価したい。
だが、詰めを欠き、主役に起用した中村勘九郎の人気が出なかったし、脚本も冒険しすぎて独りよがりとなり、視聴者が引いてしまった。
その結果、大河ドラマの材料を時代劇以外に取り、明治・大正・昭和を舞台にしたドラマ設定という新路線への目論見は瓦解してしまった。
平均視聴率の「歴代ワースト・シックス」
ワースト・シックスを列記すると、なぜ低視聴率だったかの理由が見えてくる。
①2019年「いだてん~東京オリムピック噺~」8・2%――主演中村勘九郎
②2012年「平清盛」12.0%――松山ケンイチ
2015年「花燃ゆ」12.0%――井上真央
④2018年「西郷どん」12.7%――鈴木亮平
2022年「鎌倉殿の13人」12.7%――小栗旬
⑥2017年「おんな城主直虎」12.8%――柴咲コウ
娯楽が多様化したから視聴率が下がったわけではない。2020年「麒麟がくる」14・4%、2021年『晴天を衝け』吉沢亮14・1%なのだから、ワースト・シックスとなった上記の作品は、次の3点で失点を重ね、それらの相乗効果が人気離脱に拍車をかけたと見るべきだろう。
①内容がイマイチで、視聴者の琴線に触れず
②テーマ選びのミス
③主人公の人選ミス→好感度がイマイチの役者を選んだ
NHKは天皇家を軽視している
「鎌倉殿の13人」では、NHKは、満を持して脚本家に三谷幸喜を起用し、前評判は高かったが、にもかかわらず、ワースト4の視聴率にしかならなかったのは、なぜか。
私にいわせると、主人公の北条義時(鎌倉幕府の第2代目執権)は、幕府を倒そうとした「承久の乱」に関係したとして、後鳥羽上皇ら3人の上皇を島流しにしたことと関係がある。日本史上、そこまで天皇を粗末に扱った者はいない。
たとえ遠い過去の出来事とはいえ、天皇家を軽視してそんな横暴なことをした者を主人公にしたドラマを私は見る気にはなれなかった。
ここで思い出すのは、「平清盛」で「天皇家」といわず、「王家」と言い方をしたことだ。当時、そのような言い方に反発を覚える向きも決して少なくはなかった。
王家という言い方もあったにしろ、3上皇を島流しにした北条義時を主人公にするにしろ、そういう一つ一つのことがらが、いくつか重なると、NHKは天皇家・皇室を尊崇していないと視聴者に受け取られても反論できなくなる。
女性主人公は「好感度か否か」が決め手
NHKは男女を交互に起用しているが、女性を主人公にするとコケやすい。再来年の大河ドラマには吉高由里子を紫式部の役に起用したが、彼女も銀行のCMに起用されるなど清く正しいイメージになりつつあるものの、クセが強い感じは否めず、また映画のデビュー作「蛇にピアス」でいきなりヌードを披露したこともあり、女性層の好き嫌いが分れるので、私はコケる可能性が高いと見ているが、どうなりますか。
「平清盛」の翌年2013年の大河ドラマは、綾瀬はるかを主人公に起用した「八重の桜」だったが14・6%を記録した。スキャンダルのない明るい天然系女優という憎めないキャラが好感度につながっているのではないか。
ワースト2の井上真央は演技力があるし、ワースト6の柴崎コウも演技力はあるが、綾瀬はるかと比べると「好感度」の点で見劣りがし、それが視聴率に跳ね返ったのだろう。「好感度=国民的人気」という尺度を意図的に無視しているのかと疑いたくなるようなNHKの人選だった。
(城島明彦)
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