ほんとうにあった怖くて不思議な話
いつも通る坂道を下ったところに統一教会がある
建物の脇を谷川が流れ、橋が架かっている。川の底まではかなり深いが、水量は少ない。そんな堀川だ。
教会の建物の前は道路に面した駐車スペースになっており、普段は夜間でも1、2台の車が駐車しているが、この日はゼロ。
今日の夜、友人と会った帰りに、その前を通ると、入り口の扉に何やら張り紙がしてあった。
一度は、通り過ぎたが、時節柄、気になって近づいてみると、
「取材には答えない」「信者にあれこれいわないでほしい」
といった内容のことが書いてあった。
「へえ、そうなんだ。ここらへも取材に来るんだ」
と思った。
この話は、これで終わりで、以下は、数年前の夏の話。
ベランダの方から妙な声がしたので、覗いてみると、インコが人の声をまねているのだった。
よく聞くと、
「芦田愛菜だよ、芦田愛菜だよ」
と繰り返しいうので、こちらも同じように、
「芦田愛菜だよ、芦田愛菜だよ」
と甲高い声で真似してやると、
「へたくそ、へたくそ」
といったので、思わず笑ってしまった。
手を伸ばすと飛び乗って、腕を伝って肩に乗った後、飛んで行った。
それからしばらくたって、統一教会の前を通ると、聞き覚えのある
「芦田愛菜だよ、芦田愛菜だよ」
という声が聞こえたので、足を止めた。
あたりを見回しても姿が見えないので不思議に思っていると、また、
「芦田愛菜だよ、芦田愛菜だよ」
という声がした。
駐車場に止まっていた車の窓が開いていて、後部シートの鳥かごで物まねしているのだった。
「あのときのインコに違いない」
と思ったとたん、いたずら心が湧いてきたので、物まねを返してやった。
「芦田愛菜だよ、芦田愛菜だよ」
すると、インコは、
「へたくそ、へたくそ」
というので、私は新しい言葉を教えてやった。
「淳子だよ、桜田淳子だよ」
と、5、6回繰り返すと、そのインコはすぐに覚え、
「淳子だよ、桜田淳子だよ」
と、上手に物まねした。
私はパチパチと拍手をしながら、悪乗りして歌を歌った。
「♪ようこそ ここへ クッククック わたしの青い鳥」
インコは、目をパチクリさせながら興味深く聞いていたので、さらに繰り返そうした。
ところが、その直後に協会のドアが開いたので、あわててその場を離れた。
少し歩いて、うしろを振り返ると、老年の女性が車に乗り込むところだった。
それから何年か経ったが、あのインコと会うことはなかった。
今度会ったら、教える言葉は決めてある。
「岸田さんも、大変だね。統一教会、統一教会」
(城島明彦)
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