思い出は甘酸っぱい? 昭和30年代にホップ、タイムスリップ、ジャンプや!
「ひとみちゃん」から「りんごちゃん」へ、バトンタッチに失敗
「りんごちゃん」という、男なのか女なのかよくわからない〝丸顔のでぶっちいモノマネ芸人〟が現れたときは驚いて、昭和30(1955)代後半にタイムスリップしそうになってしもた。
なんせ、「りんごちゃん」っていうのはね、昭和37(1962)年に神戸一郎が歌った歌謡曲の題名だったんや。
このお人は商船大学の出で、歌手になる前は船乗りをしてはった。マドロスや。
並みの美声と違いますのや。昭和32(1957)年12月に「10代の恋よさようなら」でデビューして、紅白出場4回はダテやないで。4回戦ボーイとは格が違うのや。
ほんでもって、そのあくる年にリリースされた「銀座九丁目は水の上」では、海外航路の豪華船の描写がありマスト。よくデッキた歌詞やで。
「銀座は八丁目までとちゃうの?」というあんたは偉い! そうなんや、九丁目は東京湾で海の上というしゃれでんがな。
少年時代のオイラは、神戸一郎のまねをして、よう歌ったもんや。
♪夢の光よ シャンデリア
粋なカクテル マンハッタン
欧州通いの 夢乗せて
銀座九丁目は 水の上
今宵は船で すごしましょう
この歌の舞台は東京湾やけど、港といえば、横浜か神戸。
このお人は神戸生まれ。でもって、神戸という芸名にしたんやが、そのまま「こうべ」と読ませるのは芸がない、かんべんしてんかというので、「かんべ」と読ませたんや。オイラの出身地の三重県にも「神戸」(かんべ)という地名があるでぇ。
かんべといえば、「簡便化」ちゅう言葉、知っとるやろ?
上から読んでも「かんべんか」、下から読んでも「かんべんか」。
もうダジャレはいわへんから、「かんべんかんべんか」(勘弁、勘弁か)
こういうのを「かいぶん」といいますんや。
「怪文」と違うで、「回文」と書きますねん。ほんまの話でっせ、怪聞やおまへん。
あかん、また脱線してしもた。
けどなあ、「りんごちゃん」はヒットせんかったんや。歌詞がイマイチやった。
♪リンゴちゃんって いうのはね
ちょっとオデコで 可愛くて
いつも町ですれ違う すれ違う娘さん
恋をしている わけではないけれど
いつもリンゴの 匂いがした
実はな、この歌の3年前に「ひとみちゃん」(昭和34年4月)という歌が出て、鶴は千年、亀は万年、大ヒットしてまんねん。
神戸一郎が所属したコロムビアレコードは、その「ひとみちゃん」にあやかろうとしたんや。歌詞の最後のフレーズに注目。「りんご」が出てきよります。
♪ひとみちゃん ひとみちゃん
君の瞳が 濡れてると
星の光も 悲しそう
君の瞳が 輝くと
小川の流れも うれしそう
丘のりんごの 木の下で
君の瞳に 恋をした
そう、「りんごちゃん」は「ひとみちゃん」の3年後の姿やったんや。
それにしても、昔の歌詞はシンプルでんなあ。
歌詞の3番では、リンゴちゃんの出身地はリンゴのなる村で、母と同じ名前じゃないかと想像し、そう思ったら、なつかしさがこみ上げてきたというストーリー。
で、歌詞の最後はちゅうと、
♪急に僕の胸に 甘いすっぱい匂いがする
「甘酸(あま)ずっぱい思い」とはいうけど、アウト? セーフ? よよいのよい! じゃんけんぽん!
甘い匂いだけならセーフやけど、「甘ずっぱい匂いがする」娘はアウトや!
♪どっどど どどうど どっどどど……
甘いリンゴも 吹き飛ばせ
すっぱいリンゴも 吹き飛ばせ
瞳がキラキラしてた女の子は、3年後には宮沢賢治の「風の又三郎」に変身して、甘さと酸(す)っぱさが入り混じった娘に変っていたんや。
そういう人生経験を「酸いも甘いも噛み分けた」というんやでぇ。
脇が(腋臭)甘く、ダジャレが出てきて、どうもす(酸)いません!
(城島明彦)
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