西郷隆盛の長男なのに「菊次郎」という次男につける名前をめぐる謎を解く!
NHK大河ドラマの解釈は説得力があるが、愛加那は長男を流産していたのではないか
西郷隆盛は、奄美大島に流されていたときに、身の回りの世話をしてくれた島娘と結婚し、男の子と女の子をもうけているが、男子は長男なのになぜか次男を意味する「菊次郎」という名をつけた。
安政の大獄に絡んで、西郷は幕府から追われる立場だったので、薩摩藩は西郷に「菊池源吾」と名乗らせ、奄美大島に身を隠させた。
菊次郎の菊は、「菊池源吾」の菊と考えるのが妥当だが、私はもっと別の意味もあったのではないかと考えてきた。尊崇してやまない皇室の御紋章である「菊」への思いも重ねての命名ではないかということだ。
長男なら「菊太郎」とすべきなのに、なぜ「菊次郎」なのか?
その理由を推理すると、いろいろな可能性が浮かんでくる。
①隠し子の存在の可能性
一番自然なのは、人にはいえない(公にはできない)「婚外子」が既にいたと考えることだ。
認知できない事情があって西郷姓を名乗れずにおり、そのことを西郷隆盛はずっと気にかけていたというケースもあり得なくはない。
②初婚の相手がこっそり男児を出産していた可能性
西郷は、初婚の相手(伊集院須賀)と離婚しているが、須賀は西郷の子を宿していなかったという保証はない。世間体をはばかり、人目につかないところでこっそり出産し、ひそかに里子に出したということも考えられなくはない。
③愛加那が菊次郎を生む前に流産していた可能性
愛加那は、菊次郎の前に流産し、その子に「菊太郎」とつけるはずだった。その子は、この世に生まれ出ることはかなわなかったが、その子のことを生涯忘れないために「菊太郎」という名を〝永久欠名〟とした。
④西郷の正妻の子ではないから「菊太郎」としなかった可能性(通説)
愛加那は島妻なので、藩の規則により薩摩へは連れて帰れないが、子は引き取れる。
子どもの将来のことを考えると、菊次郎や菊草(のち菊子)は薩摩の西郷家で暮らす方がよい。
そうなったときに、西郷が再婚する相手と生まれた最初の子(西郷家の嫡男)に「太郎」という字をつけられないのは問題が多い。そこまで配慮して「菊次郎」と命名したのではないか、というのが通説であり、大河ドラマもその説を採っていた。
この考え方は説得力があるが、極めて素朴な疑問も感じる。
「太郎」「次郎」にこだわらなくても、祖父は龍右衛門、父は吉兵衛で、自身は吉之助であることを踏まえて、「菊右衛門」「菊兵衛」「菊之助」「菊之丞」「菊左衛門」といった別の名前を付ければ、それで済むのではないかという疑問だ。
西郷隆盛の考え方は「単純明快」
西郷は、のちに糸と再婚し、3人の男子をもうけるが、
寅太郎、午(ご)次郎、酉三(とりぞう) と名づけている。
この命名は西郷隆盛という人の考え方を理解するうえで、極めて重要な例だと私は考えている。
長男には「太郎」、次男には次郎を入れ、三男にはそのまま「三男」を入れるのは無理なので「三」という字を入れ、何番目の子なのかがわかるようにしている
と同時に、いつ生まれたかまでわかるようにしている。
寅太郎は「寅年生まれ」、午次郎は「午(うま)年」生まれ、酉三は「酉年」生まれなのである。
単純明快。これが西郷隆盛という人の性格であり、考え方であり、行動原理なのだ。
加えて、裏がない。
だから、万民に愛されたのである。
大久保利通が愛されないのは、西郷と正反対だったからだ。
もう1つ、推理が必要だ。
正妻糸との間に生まれた次男にも、「次郎」を入れている点だ。
次男が2人いるのはおかしいのである。
「後々のことを考えると、菊太郎はまずいが、菊次郎なら悪くない」
とする説では、これを説明できない。
そう考えると、なぜ「菊次郎」と命名したかの理由が見えてくる。
西郷は、愛加那との間の子どものことだけを考え、後に薩摩藩に戻って再婚するときのことなど頭になく、
「そのときはそのとき、島では愛加那だけ」
と考え、愛加那との間の子には、長男は「太郎」、次男は「次郎」、三男は「三郎」という字を入れようとしたのではなかったかということだ。
菊次郎の菊は、「菊池源吾」と名乗っていたときの「次男」。
島妻の愛加那は、その前に長男を流産していたのではないか。
――私は、そう推理している。
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(城島明彦)
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