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2017/11/13

名作? いや世紀の駄作だ! 地上波初との触れ込みの映画「シン・ゴジラ」を観た率直な感想


アニメ風ではなく漫画風――セリフ早すぎ、字幕読めず、映像は斬新だが疲れまくる

 2016年7月末に公開された超大作映画「シン・ゴジラ」は、「エヴァンゲリオン」の庵野秀明が総監督・脚本、「進撃の巨人」の樋口真嗣が監督・徳木監督を務めるということで封切前から話題を集め、公開後は大人気で、興行収入82億円突破は同年公開の方が中トップとなり、日本アカデミー賞を7部門(作品賞・監督賞ほか)で最優秀賞を受賞し、WOWOWでは既にオンエアされたそうだが、「地上波」としては昨晩、テレ朝が初めて放送した。

 だが、見終わってしばらくすると、強い印象も何の感動も残らないのは、なぜなのか

 従来のゴジラ映画のイメージを覆した点や、映画技法としては非常に斬新な印象を受けるが、観客不在の読めない字幕・聞こえないセリフ――こんなせわしない映画は、見たことがない。 アイデアは斬新だが、名作とはいえず、世紀の大駄作ではないのか!?
 というのが、一夜明けた私の感想だ。


子どもたちには、字幕が読めず、セリフもわからない

 ゴジラ映画は大好きで、過去の作品はほぼ観ている。繰り返し観た作品も多い。
 そんなゴジラ映画の29作目「シン・ゴジラ」は、過去のゴジラ映画のイメージを一新したという評判が高かったが、これまで映画館へ足を運んでまで見たいとは思わず、またDVDを探し求めようという気にまではならなかった。

 当初、「シンというのはどういう意味の英語なのか」と疑問に思ったが、英語ではなく、「新」「真」「神」という複合的な意味を込めた日本語だと知ったものの、いまひとつピンとこなかった。
 さらに、狂言師の意見とかで、前足が上向きになっているのにも違和感を覚え、これまで観なかったのだ。
 4足歩行をしているうち、進化の過程で前足が退化しても、裏表が逆になることはないのではないか。
 
 そういった違和感はあったものの「地上波初」というテレ朝の惹句に誘われて、昨晩は2時間を優に超える長大作を観ることになった。

 ところが、いざ観てみると、セリフが恐ろしく早く、聞き取りにくかった。観客にセリフをわからせないで、どうする! ゴジラ映画が大好き少年たちも、これでは意味を理解できないだろう。

 セリフの量が多すぎて、セリフを早くしゃべらせないと、尺(映画の長さ)が伸びまくってしまうからそうしたのか、それとも監督の哲学なのか。斬新さをはき違えている、と私には映ったが、他の人はどう思ったのだろう。


読みきれない長すぎるスーパー(字幕)の連続

 おびただしい数の脇役の登場人物が次々と登場し、そのつど字幕が出るが、その肩書の字幕が不必要に長すぎ、読み終わらないうちに字幕が消えてしまう。
 場所を表示するスーパーについても同様。
 たとえば、本来なら「東京湾」というスーパーですます場面でも、この映画は、
 「東京都江東区東京湾お台場」
 と、「全部読ませない」ことを意図したとしか思えないような長々しいテロップを不必要に繰り返す。 
 外国人が話すときの日本語のテロップも全部読めないうちにカットが変わる。
 ゴジラ映画が大好きな子どもたちは、ついいていけないだろう。

 「誰のために出している字幕なのか」
 と不快に思わざるを得ない。
 「演出家の自己中(独りよがり)そのもの」ではないか。

 アニメでも、ここまではやらないのではないか。
 漫画なら、文字が長くても、ゆっくり読めるが、この映画では読めない。


ゴジラは怪獣神?

 God=神を「シン」と読ませる「和製英語っぽいタイトル」は、果たしてどうなのか。
 アメリカ人に対しては、「神」は「しん」ではなく、「カミカゼ」の「かみ」の方が馴染み深い。だが、映画の中で、英語の〈godjilla〉は「God」(神)云々と石原さとみが説明する場面があり、「ゴジラ」が第1作以後、アメリカで大受けしてきたのは、この命名によるとところも大きい。

 Godjilla=God+Fuji+AmGorilla(神・富士・水陸両生怪獣)
 という後講釈はどうか!

 新発見の水陸両生巨大怪獣「ゴジラ」の発案者だった東宝のプロデューサー田中友幸は、「ゴリラ」と「クジラ」の合成語として「ゴジラ」と命名しただけだったが、英語表記〈godjilla〉にgodが含まれていることは手放しで絶賛できる。
 日本語では、ゴリラとクジラは似たような発音になるが、英語ではゴリラGojillaとクジラWhaleに共通点はない。
 恐竜はDinosaur(ダイナソーズ)、怪獣はMonster(モンスター)で、これも合成語の中に入れるとなるとややこしくなる。

 そこで、水陸両用怪獣のDNAを分析したら、ゴリラのものが含まれていたとこじつけ、ちと苦しいが、

 水陸両生Amphibian(アンフィビアン)+ゴリラGorilla= AmGorilla(アンゴリラ)
 
 とする。
 よって、「ゴリラ」+「クジラ」+「God」にさらに日本の象徴Fuji(Mt.Fuji/富士山)の意味もあると、後講釈したいと、私は思うのだ。

 私が〝ゴジラの生みの親〟田中友幸氏と会って直接話したのは、たった一回しかない。
 私が東宝助監督をしていた頃か、東宝をやめてソニーに移ってからかは記憶にないが、私が書いたSFの映画企画に田中氏が関心を示しているというので、会いに行ったのだ。そのとき、どういう会話を交わしたかはまったく覚えていないのが残念である。

〇城島明彦の著書(2012~2017年のもの)

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(城島明彦)

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