いくつになっても、「次は何?」と自分に問い続けたい
たまには、真面目なことも書くのである。
「わき目もふらず」
という言葉があるが、今やっていることに夢中になっていると、他のことを考える余裕はなくなっている。
しかし、今やっていることのメドが立ち、心に少し余裕ができると、雑念が生じる。
私の場合、そういうときに決まって頭をかすめるのが、
「次は何をする?」(What’s Next?)
という言葉だ。
昔は、何も浮かばないときの方が多かったが、
「これをやりたい」
「あれもやりたい」
と同時に思うときもあった。
しかし、一生の間にやれることは限られている。
安易な道を選んだら、それでおしまい
20代の頃は、やりたいことがいっぱいあった。
若さという武器があったから、がむしゃらだったが、あとから振り返ると、とうてい自分の力の及ばないものだと気づくことが多かった。
30代、40代と年齢を重ねるにつれて、自分の能力の限界が次第にわかってくるので、やりたいことの数は1つ、また一つと減っていった。
その頃よく思ったのは、
「放電しっぱなしで充電する時間がない」
という焦りだった。
「いままで自分の中に蓄積してきた知識をどんどん消費しているのに、その消失分を補う分量の新しい知識を吸収する余裕がない。このままいくと、頭の中が空っぽになる」
そういうとき、最も安易な方法は、「こうすれば、○○できる」の類いの「自己啓発書」を読むことだ。
だが、そんな本は、何の役にも立たない。
読んでいるときは「なるほど」と思わせるかもしれないが、そのとおりにやって成功することなど、まずありえない。
そういう本を頼った時点で、すでに失敗していることに気づかないといけない。
そういう本を読んでわかったつもりになっても、血や肉にはなっていない。
なぜなら、「自分で考えようとする前向きな力」や「自分で試行錯誤する勇気」を捨てているからだ。
頭で覚えるな! 体で覚えろ!
わかりやすい例でいうと、道を歩く場合だ。
前に障害物があれば、人は自然とそこをよけて通るし、前から自転車や車が走ってきたら、道の端に身を寄せる。
そういう行為は、本を読んで学み、意識してやっているのではない。
生活体験を重ねる中で、自然と身につけ、条件反射のように自然に体が反応しているのだ。
一度はうっかりしてケガをしても、二度と同じようなケガをしないようになるのも、実体験を通じて学んでいるからだ。
だが、今の若い人たちは、「こうすれば儲かる」といった本を重宝しようとしたがる。
そのことは何となくわかっていたが、確証するに至ったのは、拙著『「世界の大富豪」成功の法則』(プレジデント社/2016年12月刊)に関するアマゾンの「カスタマー・レヴュー」を目にしてからである。
2人が次の理由で「☆1つ」の評価を下していた。
「お金持ちの解説本。誰が、何を、どうしたか。終始この展開で解説されている。Wikipediaの寄せ集めみたいなものである」
「成功者の成功物語を集めているだけなので、法則は自分で読みとるしかない。資料として読むといいかもしれない」
本を買ってくれたのはうれしいが、見当違いもはなはだしいと思った。
こういうコメントを書く読者は、おそらく、
「ビル・ゲイツはこうやって金儲けをしているから、そのまねをして儲けよう」
などと書いてあるような本がほしいのだ。
ものまねして簡単に金儲けできるなら、誰も苦労しない。
儲かったとしても、所詮、二番煎じ。自力ではない。
問題は、そういう安易な考え方をすることだ。
そういう若者が〝拝金主義者〟堀江貴文を評価するのである。
人はカネがなければ生きられないが、真のリーダーに必要なのは「人としての真心」だ。
商売でまず心がけなければならないのは、「誠意」である。
すべてをカネで片付けようとし続けたら、知らず知らずのうちにおごる心が心身に巣食い、一時的には成功しても、いつか必ず滅ぶ。
これが歴史の教える「不滅の真理」である。
「次は何をする?」(What’s Next?)
私は30数年間、物書きを続けてきたから、その観点でいうと――
必要な情報をどう集め、どう整理するかは、書き手次第である。
誰が書いても同じになるわけではない。
今日のように情報が氾濫する時代には、膨大な情報の真偽をまず選別し、どういうまとめ方をするかが重要になる。
おびただしい発言の中から、これが核心をついていると思えるものだけをセレクトすることで、そのビリオネアの考え方・生き方などがわかる。
そういう趣旨で書いているのであって、嘘八百をでっちあげて「これがビリオネアの銭儲けのマル秘手法だ」などと書くつもりは毛頭ないのである。
本に書いてあることを鵜呑みにするな。
情報は経験というフィルターにかけて選別せよ。
何事も、自分流の言葉にして理解しろ。
自分の頭で考えろ。
考えたら、自分の手足を使って確かめろ。
動けないときは、どこかに無理があると思え。
失敗したら、そこから何かを学べ。
一度の失敗で、諦めるな。
同じ失敗を二度も三度も繰り返すな。発想を変えろ。
――こういうことを心がけるようになってから、私は、
「次は何をする?」(What’s Next?)
と自問しても苦痛ではなくなり、具体的な答えを出せるようになった。
(城島明彦)