ほらぁ! (続・続)ほんとうにあった納涼ホラーだよ!
今日は少し長めの怖~い話だっちゅうの!
世の中には科学や理屈では説明のつかない話がいっぱいある。
オイラの場合、子どもの頃から人の何倍も霊感が強かったせいか、そういう出来事にずいぶん遭遇してきた。
今日お話しするのも、そんな中の1つだ。
第7話 〝マンボ〟と呼んでいた洞窟での話
これも、田舎に住んでいた小学3年生の夏休みの出来事だ。
同じクラスの友だちと、どうやったらいっぱい魚がとれるかという話題になった。
「川をせき止めたらいいのじゃないか」
と、その子がいいだしたので、オイラは、
「それがいい。どうせなら、マンボがいいのではないか」
と提案し、即決した。
マンボの語源はよくわからないが、小川の途中がこんもりとした小山になっていて、そこを貫通している洞窟のことをそう呼んでいたのだ。
空洞部の幅と高さは2メートルあるかないか、奥行きというか長さは30メートル弱だったと記憶している。
もっとも子ども時代の記憶は、誰にも経験があると思うが、実際よりかなり大きく感じるものなので、洞窟の正確な大きさは、それ以下と思った方がよい。
田んぼに水を通すために人工的にあけた洞窟のようだったが、入り口から中を覗くと真っ暗で、1人では怖くて入れなかったが、入ってみたいという好奇心はずっとあった。
どうやってせき止めるかは、簡単だった。
川は、マンボの入り口から何十メートルか手前で、二股に分かれていたので、そこに石を積んで洞窟の方へ水がいかないようにするだけですんだ。
効果てきめん、水は目に見えて減っていったので、頃合いを見計らって洞窟の中へ入った。
すでに、あちこちで魚が跳ねまくる音が聞こえ、オイラと友だちは歓声を上げた。
しかし、普通の川とはずいぶん様子が違っていた。
友だちが持参した懐中電灯は、光が弱く、遠くまで照らせず、どれくらいの大きさなのかはよくわからなかったから、これと思ったものを片っ端から魚をすくい取ってはビクやバケツに放り込んだ。
あっというまにバケツがいっぱいになったので、
「一度外に出て、魚をどこかへ移してから、また獲ろう」
と相談を始めたとき、入口の方で怒声がした。
「こらあ! 誰だっ! せき止めたのは? 田んぼに水がいかなくなったじゃないか!」
続いて、ドドッと大量の水が流れ込んできた。
「やばい」
「逃げろ」
オイラと友だちは、ビクも何もほっぽり出して、出口の方へ必死で逃げた。
途中で長靴が泥にもぐり込み、片方が脱げてしまった。
もう少しで出口というところで、オイラは背中を押されて倒れ、どろどろになった。
少し遅れて友だちも泥の中に倒れた。
それでも何とか外に出て、2人で草むらに身を潜め、様子をうかがっていると、タモが流れてきた。
続いてバケツが流れてくるのが見えたが、動きがおかしかった。
ビクのヒモが取っ手に絡みついているのだ。
ビクの中で、友だちがゲットした30センチ近いコイが窮屈そうに暴れていた。
「助けてやろう」
そう叫んで友だちは川へ飛び込んだ。
水は腰くらいまであったが、溺れる心配はないので、オイラも続き、タモと長靴の片割れを拾った。
友だちがバケツの中のコイを見ながら、
「やったぞ」
と、泥まみれの顔で満足げに笑っていたのが印象的だった。
オイラは、
「やったな」
といいながら、長靴を逆さにして水をぶちまけた。
すると、15センチくらいの茶色っぽい木のようなものが混じっていた。
「それ、人骨じゃないのか」
と友だちがいった。
「まさか」
川に目をやると、どくろのようなものが流されていった。
2人で相談して交番へ行き、それまでのことを話した。
「何かわかったら連絡する」
といわれて帰されたが、その後、何の連絡もなかった。
翌年の春、オイラは父の転勤でその村を離れ、友だちとも疎遠になった。
その友だちと再会したのは、それから20年くらい後の同窓会でだった。
オイラがマンボでの思い出を話すと、その友だちは、、
「あのときのコイは、いまも俺っちの池で生きているぞ」
とうれしそうにいって、両手を大きく広げて見せた。
50、60センチくらいにはなっているという意味だった。
「すごいじゃないか。今じゃ君んちの池の主だな」
とオイラがいうと、
「もっと驚くことがあったのを、君は知らないだろう。海外勤務で日本にいなかった頃のことだから」
「何かあったのか」
「あのときのどくろを覚えているか?」
オイラは、うなづいた。
「あのどくろは、俺たちが水をせき止めたときに怒鳴りつけた奴が殺した女のものだったんだ」
話を聞くと、殺されたのはオイラがよく知っている雑貨屋のおねえさんだった。
ある日を境に姿を見かけなくなったが、東京へ行ったという話だった。
しかし、そうではなく、乱暴されて殺され、バラバラにされてマンボの泥の中に埋められていたという話だった。
「マンボを含めて、あの一帯を再開発したときに遺骨が見つかり、調べると、どういうわけか、あのときのどくろと思われるものが、マンボから見つかったそうだ」
「海なら満ち引きがあるから、また元の場所に押し戻されることもあるだろうが、あそこは川だからな」
オイラは話題を変えた。
「あのとき、どうしてこけたんだ」
「君に思いっきり背中を押されたからだ」
「オレは押してない。だって、君はオレの後ろだったじゃないか。君こそオレを押したろ」
「オレも押していない。両手にビクやタモを抱えていたから、そんなことできるわけがないじゃないか」
その晩、オイラは、雑貨屋のおねえさんが微笑んでいる夢を見た。
友だちに電話で報告すると、こういわれた。
「オレも見たぞ。成仏できるのがうれしかったんじゃねえか」
(城島明彦)
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