ほらぁ! (続)ほんとうにあった納涼ホラーだよ!
夏になると思い出す不思議体験だっちゅうの!
オイラは霊感が強い少年だったから、いま考えると、霊異としか思えないような体験をいくつも経験している。
前回は4つの話をしたが、今日はさらに2つだ。
第5話 カブト虫採集
中1の夏休み。里山がどこにもまだあった頃の話だ。
カブト虫をいっぱい取りたくて、それまで行ったことのない山奥まで足を伸ばした。
林の真ん中にスイカ畑が広がっていて、その端の方に井戸があった。
むしろとよしずで上を覆ってあった。
それをのけて中を覗き込むと、かなり深いところに水面が見えた。
石を投げると、ぽちゃん、ぽちゃんと音が返ってきた。
それがおもしろくて、石をいっぱい拾い集めて次々と投げていると、背後から
「坊主、そんなことしちゃダメだ」
という声がした。
麦わら帽をかぶったおじいさんが、険しい表情をして立っていた。
「そんなことをしたら、井戸が埋まってしまうじゃないか」
厳しい声だったので、
「もうしません」
と謝るしかなかった。
「悪いと気づいたのなら、もういっぺんだけ、やらせてあげよう」
そういわれても、やりづらいが、いわれるままに、大きな石を拾って井戸に投げ落とした。
ぽちゃん、ぽちゃんと前より大きい音が返ってきた。
「聞いたか、今の音を」
「はい」
「1個の石を投げたのに、2度、音がしなかったかい」
「しました」
「おかしいと思わなかったか」
そういわれて、初めて何か変だと思った。
石は1つなのに、水面に当たる音は2つだったのだ。
「ここで、何日か前にカブト虫を取りに来た子どもが1人、この井戸にはまって死んだ。そのときは、ドボンという大きな音が1回しただけだった」
おじいさんのいう意味がわからないかったから黙っていると、
「もう1人、はまって死ぬという意味なんだよ。わかるかな」
そういって、ニヤッと笑ったので、ぼくは怖くなって、そのおじいさんを突き飛ばして、そこから逃げた。
――夏休みが終わって、学校で友だち何人かにその話をしたが、誰も信じてくれなかった。それから何日かたって、その井戸から子どもと思われる死体が2体、引き上げられたというニュースがテレビで流れた。
1体は白骨化していたが、もう1体は死後数日たっており、家族から捜査願いが出ていたことから発見されたというような内容だった、
オイラは、この奇妙な話を成人してから何度も話したが、誰も信じてはくれなかった。
第6話 家族旅行で行った旅館
中2の夏休みに家族で温泉旅行したときの話だ。
家族は、両親とオイラと3つ下の妹の4人。
旅館に着いて小休止後、夕食前にみんなで名所までドライブすることになっていた。
ところが、出発時刻が近づいたとき、急に腹が痛くなり、ぼくだけ留守番することになった。
浴衣に着替え、窓際に布団を敷いて横になっていると、いつの間にか眠ってしまった。
足を引っ張られる夢を見て、目を覚ますと、家族が戻っていた。
「おにいちゃん、その足、どうしたの」
と妹がいうので、見ると、両足のくるぶしの少し上のところに、手でつかんだような跡がついていた。
その晩、オイラはまた夢を見た。
今度は首を絞められる夢だった。
「どうしたの」
という母の声で目を覚ますと、体中にびっしり寝汗をかいていた。
話し声で目を覚ました妹が、驚いたような顔をして、
「おにいちゃん、その首、どうしたの」
といったので、鏡を見ると、首に手の跡がついていた。
そのとき、はっと気づいた。
オイラは、眠っている間に体を回転させ、壁の方に頭を向けて眠っていたのだ。
そう話すと、母が恐怖でひきつったような顔をしてフロントに電話をし、部屋を替えてもらうことになった。
もう一泊する予定だったが、翌朝、別の旅館に移った。
そこでは何も起こらなかった。
(城島明彦)