「軍艦マーチ」に送られて、護衛艦いずも、いざ出陣!
♪ 「いずも」群れ飛ぶ かもめさえ
一杯きげんの熊さん、ごきげんで、たきぎを撫で撫でしながら、
♪棒や よい木だ ねんねしな~
と、歌が口をついて出て参ります。
「日本昔話」の次は、都はるみの「涙の連絡船」でございますな。
♪いずも群れ飛ぶ カモメさえ
と、そこへ、八っあんが通りかかりましたな。
「おめえ、思いっきりなまってるじゃねえか」
「俺の歌は、なまっちゃいねえ! 耳の穴かっぽじって、よおく聞いてみやがれ」
と熊さん、歌い直します。
♪ いずも群れ飛ぶ カモメさえ
「やっぱり、なまってるじゃねえか、〈いずも〉じゃなくて、〈いつも〉だろうが」
「これでいいんだ。護衛艦『いずも』のことなんだから」
♪いずも群れ飛ぶ カモメさえ
とうに忘れた 航海なのに
「米原子力空母カールビンソンの護衛に出かけた、あの〈いずも〉か」
「そう。長嶋茂雄も呼びかけた『カール! カール!』のカールビンさんのお手伝いさ」
「カールビンじゃねえ、カールビンソンだ」
「そうともいう。宅配便ならクロネコヤマトのカール便、割れない瓶なら軽い瓶、CMなら――」
と熊さん、また歌い出しましたな。
今度はCMでございます
♪お菓子はカール
「いうだろうと思ったよ、困った奴だ。護衛艦『いずも』、出陣!。軍歌でお見送りか」
「よくぞいってくれました」
と熊さん、また歌いましたな。
♪守るも攻めるも 黒鉄(くろがね)の
今度は八っあんも、一緒になって歌いましたぞ。
♪浮かべる城ぞ 頼みなる
浮かべるその城 日の本の
皇国(みくに)の四方(よも)を 守るべし
歌う熊さんの右手が、いつしか、丸い取っ手を掴む手つきに!
それを見て、八っあんがいいます。
「軍艦マーチも、今じゃパチンコ屋の専売特許みたいになっちまったな」
「東京国際マラソンぐらいの出発時くらいしか演奏されなくなった」
「そういや、『君が代行進曲』も『軍艦マーチ』も、海上自衛隊のHPにアップされていないからなあ」
と八っあんがしんみりした口調でいいますてぇと、熊さん、
「忘れられた名曲か」
と呟き、思い出したように、また「涙の連絡船」を口づさみます。
♪とうに忘れた 恋なのに
今夜も汽笛が 汽笛が
調子に乗る熊さんを見て、そうはさせじと、八っあんが割り込みます。
♪汽笛一声 新橋を
なに、負けてなるかと熊さん、声を張り上げて「涙の連絡船」。
♪独りぼっちで 泣いている
忘れられない 私が馬鹿ね
すると、八っあん、浪花節の広沢寅造の声色をまねて、喉から絞り出すような声で、
♪馬鹿は死ななきゃ 治らない~っ
皮肉られた熊さん、動揺したのか、歌詞を間違えて、都はるみの別の歌を口づさんでしまいましな。
♪馬鹿っちょ 出船~
――お日柄もよろしいようで!
(城島明彦)
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