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2017/03/18

60年前のギリシャ映画「春のめざめ」をDVD化してほしい


ギリシャ人の少女クレオパトラ・ロータ

 「いつか観たい」と思いながら、気づくと何十年も過ぎていたという映画がいくつもある。
 そういう古い作品がDVDになっていればいつで見られるが、DVD化されずに今日に至っているものも多い。
 1963年に制作され、翌年日本で公開されたギリシャ映画「春のめざめ」(監督ニコス・コンドゥロス)も、そんな作品だ。白黒映画である。

 若い人の中には、「春のめざめ」と聞いて、2007年に日本で公開されDVDにも収められているロシア製アニメ「春のめざめ」を想起する人もいるかもしれないが、それとは別物。
 19世紀末にドイツの劇作家フランク・ヴェーデキントが書いた戯曲「春のめざめ」も有名だが、これとも無関係である。

 私が長い間、観たいと思ってきた映画「春のめざめ」は、ギリシャの伝説にヒントを得た完全なオリジナル脚本による白黒映画で、原題「Mikres Afrodites」(アフロディ諸島)、英題「ヤング・アフロディテ」。日本公開時の映画の題名が「春のめざめ」だった。
 アフロディテは別称「ヴィーナス」。海ボッチチェリの名画「ヴィーナスの誕生」にあがかれたように、海の泡から生まれた美と愛の女神である。

 アニメ、戯曲、映画の「春のめざめ」に共通しているのは、少年の性のめざめをテーマにしている点だ。
 映画の原点となった伝説は、エーゲ海のレスボス島の首都ミティリという町で、森の中でヤギに育てられた捨て子の少年ドリニアスと、〝ニンフたちの洞窟〟と呼ばれている海のそばの洞窟で羊に育てられた捨て子の少女クロエーが、出会って繰り広げられる〝性に目覚める頃〟の話だ。

 この伝説はラベル作曲のバレエ曲「ダフニスとクロエ」となり、画家シャガールはその小説にさし絵を描き、オペラ座の天井画にもしているので、ヨーロッパではよく知られているが、それを映画にしたのはこれが初で、しかもギリシャで映画化されたことで話題を呼んだ。

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 この映画が封切られたとき、私は高校生で、映画ポスターに描かれた半裸の少女の姿(今風な言葉でいう〝半乳〟)にハートを射抜かれた。
 そのポスターからの妄想で「見てはいけない成人向け映画だ」と勝手に思い込んだ。
 しかも、その少女を演じた女優のクレオパトラ・ロータという芸名が、魅惑的だった。
 豊満な肉体を誇ったといわれている古代エジプトの女王クレオパトラと、子供から大人への移行期に当たる思春期の少女を連想させるナボコフの小説「ロリータ」がミックスされているのだ。


半世紀以上たって、You tubeで観た感想

 それから半世紀以上が過ぎたが、日本ではDVDになっていない。だが、どこかの国でDVD化しているかもしれないと思った。
 もしそうならyou tubeにアップされている可能性もある。そう考えて「Young Aphrodites」(ヤング アフロディテ)でチェックしてみると、あった! ギリシャ語の映画そのままのものと、スペイン語の字幕入りのもので、後者は、オリジナルの映画の上映時間87分に比べると、かなり端折っているが、後者は5分ほど足りないだけでほぼ全編に近い。

 画像に難はあるものの、ただで観ることができるのだから文句はいえない。胸を躍らせながら観た。
 セリフの少ない映画ではあったが、ギリシャ語で交わされる会話は、チンプンカンプンで、勝手に想像するしかなかったが、ストーリーはちゃんと把握できた。

 興味をひく映画なので、著作権の方面が複雑なのか、いまだにDVDになっていないのは残念だ。日本公開時の配給元だった松竹映配が今も権利を持っているのなら、DVDにすれば元は取れるのではないか。

(城島明彦)

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