漢詩「春眠」の孟浩然(もうこうねん)は、もうこんねん?
自分流のすゝめ
今はもう秋 秋の反対は春。
誰もがよく知っている「春の漢詩」といえば、
孟浩然(もうこうねん)の五言絶句「春眠」。
中学一年の国語の教科書に載っていた。
春眠暁を覚えず
処処啼鳥を聞く
夜来風雨の声
花落つること知る多少
春は眠くて、なかなか目が覚めない
あちこちで、鳥のさえずりが聞こえる
夜半に、風雨の音がしていた
花がいっぱい落ちたに違いない
日本語に訳すと、大体、こんな風な内容になる。
ところが、これを風流な文語に訳した人がいた。
川路柳虹(かわじ りゅうこう)という明治生まれの詩人だ。
こんな訳文だ。
春のあしたのよき眠り、
夢のうつゝの鳥のこゑ
さは、夜嵐(よあらし)に散りしきし
花の匂(にほ)ひも艶(あで)にきく。
最終行の「きく」は、「香をきく」という意味だ。
この日本語訳を初めて目にしたときは、驚いた。
五言絶句だけに、しばし絶句。
そこで、おいらも、妙な訳し方をしてみた。
春は眠うてたまらん、爆睡して目が覚めへんのや
あっちゃこっちゃで、鳥が鳴いとるがな
真夜中に、どえらい嵐が吹きよりましてな
花が仰山(ぎょうさん)落ちたんと、ちゃいまっか
あんたはんも、おひとつ、どうどす?
(城島明彦)