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2015/05/21

いただきもののクラシック入門雑学本とレンタルもののDVD3本


イタリア・スペイン合作映画「ドン・ジョヴァンニ」(2010年日本公開)

 ♪春の うららの 隅田川
 春はサクラの木の下で、睡魔に襲われ、うつら、うつら。

 春過ぎて、梅雨(つゆ)来にけらしの気配がすると、うつら、うつらから「ら」が抜け落ちて、
 ♪うつ、うつ、うつ、鬱が静かに忍び寄ります ウツ救命丸

 毎年毎年、こんなことの繰り返しでございマスクメロン。

 そんなとき、知り合いの編集者から、ゴホンとくれば龍角散ではありませぬ、ご本でございます、ご本をいただいたのでございます。


 『クラシック音楽のトリセツ』(飯尾洋一著/SB新書)

 帯に目をやると――

 『とっつきにくい』
 『面白さがわからない』
 『コンサート代が高い』……
 そうした誤解をときほぐします。

 そして太字で、
 「クラシックにハマりたかったあなたのために!」
 

 この影響か、TSUTAYAへ行ったときに、
 「そうだ、クラシック関係の映画を観よう」
 となってしまった。

 で、借りた3本のDVDは、マリア・カラス、モーツアルト、モジリアニだった。
 モジリアニは音楽家ではなく画家だが、私にとっては、どちらも天才と狂気の間(はざま)に生きた連中が多く、似たようなもの。
 というわけで、映画の話が先で、本のお話は、あと回し蹴りでございます。


暗すぎてダメよ、ダメダメ! のだめカンタービレ、画家モジリアニのダメ映画

 映画では、冒頭に画家が集まるモンパルナスのカフェ「ラ・ロトンド」の当時の様子が再現されていたので、
 「おっ、いいぞ。さすがフランス・イギリス・イタリアの合作映画だ」
 と期待したが、とんでもハリー・ポッター!
 ♪嘘ついたら、ハリー千本 飲~ますっ!
 の心境になってしまった。

 1958年のフランス映画「モンパルナスの灯」(ジェラール・フィリップ主演、アヌーク・エーメが助演女優)に比べると新解釈が目立ち、ピカソやルノワールの描き方も極端で違和感を受けたが、それ以前に話が暗すぎてますます滅入ってしまい、もはや欝にウツ手なしだった。 


〝20世紀最高のプリ・マドンナ〞の映画はどんな?

 「口直しだ」
 と、続いて観たのが「マリア・カラス 最後の恋」。

 海運王とか造船王とかいわれたギリシャの大富豪オナシスとの出会いから別れまでを描いた伝記映画だが、これも決して明るい話ではない。

 ♪ カラス なぜ泣くの カラスのほかに かわいい愛人が いたからよ
 ♪ 三千世界のカラスを殺し 主と朝寝がしてみたい
 ♪ マスカラ バッチリ 増すカラス
 
 女好きなオナシスがマリア・カラスを捨てて妻に迎えたのが、金使いの荒さが異常水域を超えていたジョン・F・ケネディ未亡人。
 現駐日大使のキャロライン・ケネディのお母さんだ。(おフランス風にいうと、キャロリーヌ)

 この話もすっきりせず、うつ解消などとんでもなく、「暗い病気だ、クラシック」とダジャレを飛ばしたくなるような暗い内容だった。


映画「ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツアルトの出合い」

 ならばと、もう1本! モーツアルト物の映画だ。

 イタリア・スペイン合作「ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツアルトの出合い」(2009年製作/日本公開は翌年)という題名も面白そうだ。

 歌劇「ドン・ジョヴァンニ」は、作曲で、同年にプラハで初演されたから、228年も前のお話ということになる。
 女たらしのドン・ジョヴァンニという青年貴族を描いた歌劇「ドン・ジョヴァンニ」は、モーツアルトが死ぬ3年前の1787年の作品だが、映画「ドン・ジョヴァンニ」の主役は、その台本を書いた劇作家ロレンツォ・ダ・ポンテ。
 この歌劇には原作がある。フランスの劇作家ボーマルシェ(「ボン・マルシェ」という百貨店と似た名前だ)が書いた戯曲で、ダ・ポンテはそれを脚色、2か月で歌劇に仕立て上げたのだ。
 「フィガロの結婚」「セビリアの理髪師」もマルシェの戯曲が原作だ。


映画の主役ダ・ポンテは〝いかれポンチ〞の元神父

 ダ・ポンテという青年神父が、放蕩の罪でベネチアを追放され、ウィーンへ行く。
 そのダ・ポンテが、どうやってモーツアルトと出会い、どうやって「ドン・ジョヴァンニ」の台本を書き、それをモーツアルトがどうのように作曲したかという新解釈の物語。
 往年のプレイボーイのカサノバが、台本に口を挟むところも出てくる。

 モーツアルトがダ・ポンテと組んだ最初の歌劇は「フィガロの結婚」。
 これが1786年に好評を博したので、第2弾として「ドン・ジョヴァンニ」ができたのだが、映画では「ドン・ジョヴァンニ」に焦点を絞った。

 映画としてはよくまとまっているが、観て元気になれる内容ではなかった。


いただきものの本「クラシック音楽のトリセツ」のお話
 
 『クラシック音楽のトリセツ』は、
 「クラシックのことを、むずかしくなく知りたいが、いまさら人には聴けない」
 と思っている人向けに書かれた雑学の本なので、基本的なことは大体盛り込まれており、軽い感じで読める。

 音楽家の伝記を読了するには時間が相当かかるが、伝記映画なら長いものでも2時間半もあればすむ。
 音楽にしても絵画にしても、急に知識を叩き込もうとするのはよくない。
 興味を感じたところから入るのが一番だ。

 ベートーベンにしろ、モーツアルトにしろ、軽い気持ちでまず音楽家を描いた映画を観てから、入門書に目を通し、興味を覚えた人物や作品に出会ったら、そこを深追いするようにすると、クラシック音楽の知識がどんどん確かなものになっていくのではないか。


 (城島明彦)

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