御嶽山を「おたけさん」「みたけさん」と読んだのは、お粗末だった
「御嶽山」 あれこれ
熱が出てダウンし、昼となく夜となく眠っていたが、熱が引いて夜中の中途半端な時間に目が覚めた。
それにしても、突然の御嶽山噴火には驚いた。
もっと驚いたのは、大勢の犠牲者が出たことだった。
にもかかわらず、気象庁やら予知連やらは、冷淡で開き直ったような記者発表を行った。
「御嶽山」を正しく読めないアナウンサーやキャスターがいたことにも驚いた。
「みたけさん」(29日放送 フジテレビ「とくダネ!」のキャスター小倉智昭)
「みたけ、おたけさん、みたけさんの噴火」(29日放送 NHK「正午のニュース」高瀬耕造アナ)
東京の東急池上線に「御嶽山」という駅があり、「おんたけさん」と読む。
東京の青梅市にある山は「御岳山」で、こちらは「みたけさん」である。
小倉は東京暮らしが長く、高瀬は兵庫出身で大学は東京だから、それと混同したのか?
それにしても、「おたけさん」はいかん! 名前がふざけすぎる。
「オタケさん」は、昔、オームの鳴きまねをするときによく使われた言葉だ。
念のために調べてみたが、「おたけやま」と読む山はあっても、「おたけさん」はない。
高瀬はNHKに入局後、新潟支局に勤務しており、そこで知り合った女性と結婚している。
もしかしたら、新潟にある山の読み方をしてしまったのではないか。
好意的にそう考えて調べてみると、新潟県魚沼市に「おんたけさん」「みたけやま」と呼ぶ山が2つあったが、「おたけさん」などという〝ひょうきんな名前〞をつけた山は新潟にも全国にも1つもない!
「木曽節」の木曽の「なかのりさん」は山ではないのか?
「木曽節」は、数多い民謡のなかでも比較的よく知られた部類の歌で、私が「木曽節」を知ったのは小学生の頃で、「おんたけさん」という名前は「木曽節」で知った。
私が聞き知っている「木曽節」の歌詞は「バリエーション」で、「正調」ではない。
私が覚えているのは2番の歌詞まで。
♪木曽のなあ なかのりさん
木曽の御嶽山は なんじゃらほい
夏でも寒い ヨイヨイヨイ
ヨイヨイヨイのヨイヨイヨイ
♪あわせなあ なかのりさん
あわせやりたや なんじゃらほい
足袋そえて ヨイヨイヨイ
ヨイヨイヨイのヨイヨイヨイ
※あわせは「袷」(裏地をつけた着物)で、山中が寒いことがわかる。
「なかのりさん」「御嶽山」と続くので、「なかのりさん」という山もあるのかと思っていたが、そうではないらしい。
どんな字を書くかといえば、「乗鞍岳」からの連想で、「中乗山」と書くのではないかと勝手に思っていたが、そうではないらしい。
「中乗りさん」に3節あり
地元では、「中乗りさん」には3説あるといっている。
木曽といえばヒノキ。ヒノキといえば木曽。
木曽の山奥から切り出したヒノキの丸太を、いかだに組んで川下へ流した。
いかだは3つで、先頭のいかだに乗る人を「舳(へ)乗り」、最後尾のいかだに乗る人を「艫(とも)乗り」、真ん中のいかだを操る人を
「中乗り」
といい、それだとする説。
これが第1の説で、最も説得力があとされている。
舳は「へさき」で「船首」、艫(とも)は「船尾」のことなので、3つのいかだは一心同体、一隻の船と見立てていたことがわかる。
1960(昭和35)年に橋幸夫が歌ってヒットした「木曽ぶし三度笠」の詞を書いた佐伯孝夫は、この説を採り、「中乗り」ではなく「仲乗り」として「仲乗り新三(しんざ)」を登場させている。曲は名コンビの吉田正である。
♪やくざ渡世の 白無垢鉄火
ほんにしがねえ 渡り鳥
木曽の生まれよ
いつか水棹(みざお)を
いつか水棹を長ドスに
いかだを操る水棹を握っていた手に、いまでは長ドスを握るやくざになってしまった……実にうまい歌詞で、このあとに「木曽節」が入るが、その歌詞は、
♪夏でも寒い ヨイヨイヨイ
ヨイヨイヨイのヨイヨイヨイ
となっており、私が覚えていると同じだ。
キャスターの小倉は私よりひとつ年下。
この歌を知らないわけがないのに、読み間違えるとは、どういうわけか。
第2の説は、馬の鞍の中央に乗った「人」をさすとする説。
「正調 木曽節」の歌詞を読むと、この説も有力と思えてくる。
第3の説は、山岳信仰に関係がある。御嶽山に宿る神のお告げを信者に伝える「中座」(なかざ)と呼ぶ人を指すとする説だが、これはちょっと無理がある。
新説「なかのりさん」 噴火して消えた幻の山か!?
御嶽山の噴火活動は、詳しくわかっていない。
「木曽節」に歌われた「木曽のなかのりさん」は、荒唐無稽かもしれないが、3説とは別の「伝説の中乗山」のことではないのかと私には思えてきた。
はたして?
(城島明彦)
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