「蒲柳の質」(ほりゅうのしつ)で、どれだけ時間を損したか
土手の柳は風まかせ
どうもいけませんや、楽しいはずの土曜日も熱を出してダウンしちまった。
眠っていても、熟睡できないのがつらく、頭のなかはラリパッパ状態。
♪ツーツーレロレロ ツーレーロ
妙な音楽が鳴りっぱなしだ。
なんで、こうなるの!?
それにしても、毎年毎年、季節の変わり目になると、どうしてこうなるの!?
若い頃からずっとそう。
こういう情けない体質の人間を、昔の人は、
「蒲柳の質」
といったのですな。
蒲柳とは「川端柳」(かわばたやなぎ)のことですな。
♪かわばた松ちゃん きゃあめぐろ おてもや~ん
おっと、この歌詞は関係なかった。川端が共通しているだけですな。
川端に生える柳は、
葉っぱが細く、へらへらと風になびき、見るからに頼りなげだ。
秋の声を聞いたとたん、葉を落とす。
はっぱ よれよれ。
そこで、
「体が弱くて、すぐに病気になってしまう体質の人」
を「蒲柳の質」といったのだが、平成の今じゃ、まず使わない。
死語だ。死語硬直。
彼女は、風邪とともに去りぬ。遺品はセリーヌ。
She gone!
ああ、お寺で鐘がゴ~ン。
車のなかで、カルロス・ゴ~ン。
サッカー場では、中山ゴ~ン。頭を打った?
つまり、「蒲柳」はもはや死語じゃによって、
「蒲柳」は、もう「保留」
と、またまたダジャレを思い浮かべる自分が、われながら情けない。
情けないといえば――ガマだ、ガマにも我慢の限界がある。
さて、お立合い、取り出だしましたるこの逸品、そこんじょそこいらにある薬とはわけが違うよ。
富士山麓にオーム鳴き、筑波山麓じゃあガマが泣く!
ガマをば、四面に鏡を張った箱に入れますてぇと、
ガマは、鏡に映ったわが身のあまりの醜さに、がまんできず、
「おしっこ!」じゃない、
全身から、たら~りたら~りと脂汗を流すのでございます。
その脂(あぶら)を凝縮したものが、この蝦蟇(がま)の脂だ。
そんな話がインドの聖典「ガーマスートラ」といっておりますぞ!? グラッチェ!
なんのこっちゃ? ああ、情けなや。
粋人・高杉晋作の都々逸(どどいつ)
♪何をくよくよ 川端柳 水の流れを見て暮らす
これは、高杉晋作がつくったとされる「都々逸」(どどいつ)。
高杉晋作の都々逸では、
♪三千世界の 烏を殺し ぬしと朝寝がしてみたい
の方がよく知られている。
この都々逸をもじった歌謡曲が、昭和の中頃にヒットした。
昭和31(1956)年頃の話で、そのとき私は10歳。
歌うは、高田浩吉(たかだこうきち)。高田美和のお父さん。高田美和も、「あの人は今?」か。
♪何をくよくよ 川端柳
のぉ 三四郎さん
水の流れを 見て暮らす
元歌に「のぉ、三四郎さん」を加えただけの、「花笠太鼓」という松竹映画の主題歌。
ラジオから流れてくる歌を聞いて、「何をくよくよ」のフレーズを覚えてしまったのだ。
高田浩吉は、この歌より20年も前に同じ柳をテーマにしたこんな歌を歌ってヒットさせていた。
♪土手の柳は 風まかせ
好きなあの子は 口まかせ
ええ しょんがいな
この歌も、ついでにラジオで流れたものだから、小学生でありながら覚えてしまった。
というわけで(?)、替え歌でございます。
♪童貞の柳は 風邪まかせ
好きなあの子は 愚痴まかせ
ええ しょんがいな
※「愚痴まかせ」は、「口まかせ」にすると意味深になるので、お気をつけ遊ばせ
昭和は遠くなりにけり
高田浩吉、遠藤幸吉、円谷幸吉と語呂合わせしても、いまの若い人たちにはピンとこないでしょうな。
高田浩吉は、「股旅物」がよく似合った美声の映画俳優。
遠藤幸吉は、力道山の時代のプロレスラー。
円谷幸吉は、東京五輪のマラソンの銅メダリスト。
なんのこっちゃ。
(城島明彦)