「ほん怖 2014」の総合評価は、大甘で「Bの下」か「Cの上」
フジテレビの人気納涼番組「ほん怖2014」の採点
電車のなかで、隣に座っていた女子高生2人組が
「今晩、ほん怖だよ」
「見なくっちゃ」
と話しているのを、たまたま小耳に挟んだのがきっかけで、見た。
短く完結する物語をいくつも続ける「オムニバス」なので、主演に人気女優・俳優を何人も使え、それも人気の理由になっているようだ。
今年は「15周年記念」と銘打っているので期待したが、「それほどでもなかった」というのが正直な感想。
現実味があるかどうかは別として、物語として一番よくできていると思ったのは、「犯人は誰だ」(草彅剛主演)だった。
◆「犯人は誰だ」(草彅剛主演) 評価 Aの下
恐怖というより〝コミカルホラー〞。そういう斬新な視点が評価できる。
しかし、ゾーッとして身の毛のよだつのを「恐怖」とすれば、恐怖度はゼロだ。
課長の課長は、「自分には予知能力がある」というOLを最初は相手にしなかったが、テレビで報道される事件の犯人を次々と言い当てるので信用するようになるという話。
時間的制約はあるものの、身の毛もよだつ恐ろしい事件に二人が巻き込まれるような筋を加味していたら、Aの下ではなく評価Aになった可能性も。
惜しかった!
◆「腕をちょうだい」(桐谷美玲主演) 評価 Bの下orCの上」
アイデアとしては悪くないが、テーマの「女の嫉妬心」を脚本が深く描いていない点に問題がある。
右腕をつかまれる悪夢を毎晩見るようになった主人公は、自分に対する同僚OLの嫉妬心が原因と考え、呼び出して話をするが、そうではなかった。同僚OLが腕を損傷する大ケガを負う。そして見た夢に現れた腕をつかむ亡霊の片腕がなかったという話。
(おまけ)なぞとき
桐谷美玲とかけて、
「高級料亭の吸い物」と解く
そのこころは?
「だし」が決め手でしょ。
※〝美少女系女優〞桐谷美玲は、NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」に絶世の美女役「だし」に出演。
「だし」は、信長、秀吉、官兵衛を裏切る〝最低の戦国武将〞木村村重の悲劇の正室で、夫が幽閉した旧知の官兵衛を、牢から脱出させようとする「心優しいクリスチャン」だったが、村重に見つかり、官兵衛は身障者になってしまう。
その後、村重は身の処し方を誤り、しかも自分だけ逃走したので、残された「だし」ほか多数の一族郎党は残らず処刑された。
(蛇足)「腕をちょうだい」を見た往年のオカマ演歌歌手のつぶやき
「腕をあげてもいいから。♪ おかねをちょうだい」
◆「S銅山の女」(石原さとみ) 評価 Bの下
これが「第一話」で、面白さを狙ったはずだが、こみいった話になっている割には、まったくありえない話。
鉱山に「非業(ひごう)の死」はつきものであり、呪われた閉坑という設定は悪くなく、坑道の奥に奇妙な仮面がいくつも並んでいるという話も悪くないが、人の目にみえるお化けのようなものが追いかけてくるというのはSFの世界。
保険会社の営業担当の女性が地方に飛ばされ、車で営業に出てS銅山と呼ばれる閉山を発見。入り口を封印する奇妙な仮面が気になり、手を触れると鎖がはずれ、中に入りたい誘惑に駆られる。
その話を聞いた上司の部長が仮面を取りにいって奇妙な病気で入院。
彼女が、その仮面を洞窟へ返しにいくと、女のお化けが出て追いかけてくる。あわやのところで逃れ、部長を見舞いに行くと、その姿が女のお化けのような姿だったという話。
(おまけ)なぞとき
石原さとみとかけて
和風スパゲッティを食べまる人と解く
そのこころは?
たらこ口
◆「さとるくん」(剛力彩芽主演) 評価D
公衆電話からケータイに電話して相談すると、「さとるくん」が出るという話。
近年は、ケータイを使った、この手のありもしない安易な怪談話が多く、これもそのパターンの一つ。
(蛇足)
「さとる」で思いだしたのは、スペインの宮廷画家ゴヤの絵に「わが子を食らうサトゥルヌス」。
ゝケータイをテーマにするなら、
「待ち受けにこういうのを使っている不気味な女の子がいた」
というような、もっと奇抜で発展性のある発想は浮かばないのか、と文句をいいたくなる。
◆「タクシードライバーは語る」(坂上忍主演) 評価 Cの中
怪談の定番「タクシー運転手の話」。可もなく不可もなく。
◆「闇への視覚」(黒木瞳主演) 評価 Cの下
見えない霊が見える女子社員に、その霊が取り付いてくるという、よくある話で、途中でチャンネルを変えたくなった。
◆「誘いの森」(AKB48の島崎遥香) 評価 論外
友人と二人で出かけた山奥のトイレが舞台。
むろん、水洗ではなくて、ポットン式。
トイレに行った友人がポーチを忘れたが、不気味なので取ってきてくれといわれ、しぶしぶ取りにいくと、便器の下から女のお化けがいきなり登場して、「キャーッ!」でおしまい。
現実味の乏しさもさることながら、
「小便まみれ、糞まみれのお化けか!?」
という連想も視聴者には働き、設定も物語性も最低。
ドラマの設定のような人気のない山奥で催したら、女性であっても、不気味なトイレしかなかったら、そのあたりにしゃがんで堂々と放尿・野グソを行うのが普通。
(おまけ)なぞとき
「誘いの森」とかけて、
「廃屋の庭」と解く。
そのこころは、
「クサっ!」
※「臭っ」と「草」をかけた。
♪ 草津 よいとこ、一度はおいで、どっこいしょ、どっこいしょ
●「さとるくん」のようなドラマは、テレビのブラウン管をぶち抜いて人間のお化けが這い出てくるというような荒唐無稽な「貞子」が、その種をまいた。
「貞子」の奇抜な発想は秀逸だが、だからといって、科学万能のデジタル時代の今、それをまねて、電池が抜いてある電話が勝手に鳴りだしたり、電源の抜かれたテレビのスイッチが突然オンになるような現象は100%起こりえず、そういうデタラメなものをホラーとするドラマ製作者の安易で底の浅い発想そのものが問題だ。
いきなり背後からワッといって驚かせるのがホラーではないのだ。
突然、化け物が出てくれば、誰でも「キャー」ということになる。
「そうか、こういう話もあるのか」
「発想がユニークだ」
と視聴者をうならせるような深みやヒネリを効かせた作品をつくってもらいたいものだ。
●今年も、民放のテレビ局は「怪奇現象」の特番を放送しているが、テレビやビデオカメラの感度がハイレベルになったために、トリックであることが即座にわかるようになった。
あきらかな「やらせ映像」を流して、「おわかりになっただろうか、もう一度」などとやる映像は、100%演出されたものというひどさだ。
海外のものは特にひどい。
そういう映像を流すという神経は、かつて、インチキな映像を徹底検証することなく、「UFOだ、UFOだ」といって流した感覚と変わらない。
●昔からいわれている怪奇現象は、山のようにある。
そういうものを一つ一つ、点検するというようなカネも時間もかかる番組づくりをすべきではないのか。
昔からよくいわれてきたのは、たとえば、芝居や映画で「四谷怪談」をやると、決まって出演者に事故が起きたり、撮影現場や芝居途中でおかしな出来事が起きたという話である。
こういうものを徹底検証するようにすれば、面白い番組になるはずだ。
「ほんとにあった怖い話」とは何か
私の出身地である三重県の四日市市で、昨年夏、花火大会を見に行った帰りに、人気のない場所で、付近の高校生の男に殺されるという事件があった。
犯人は半年後に逮捕され、取調べのなかで、
「夢に何度も彼女が出てきて怖かった」
と自供している。
本当に怖い話とは、こういうものなのだ。
(城島明彦)
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