高梨沙羅ちゃんづくし
サラリンピックはこれからだ!
沙羅ちゃん、元気を出せ!
17歳で世界のベスト4だ! 胸を張れ!
君は若い。
君の未来は輝いている。
4年後だって、8年後だって、12年後だってある!
――というわけで、沙羅ちゃんを励ますために、毎度バカバカしいお笑いを一席!
題して、料亭気楽の「沙羅ちゃんづくし」でございます。
場所は、オリンピック会場があるソチ。
そこで、コーチと沙羅ちゃんがなにやら会話しておりました。
まっさらのスキーウェアがよく似合う高梨沙羅ちゃん。
その姿を見て、コーチがいった。
「ウェアの下の腰にあたりに何か巻いているのか?」
「さらし」
「それはいかん、さらし者になってしまう」
といって、コーチは、突然、口ずさんだ。
♪ 包丁1本、さらしに巻いて~(セリフ「こいさんが、わてを初めて法善寺へつれて来てくれはったのは『藤よ志』に奉公にあがった晩やった」(※藤島恒夫「月の法善寺横町」)
「やめて! 調子が狂うよぉ」
「いや、大丈夫。沙羅は、どんなときでも絶対に調子は落ちない」
「えっ、なぜ?」
「沙羅は女だ。だから、おちんこない(≒落ちっこない)」
「きゃっ、セクハラ」
「何はともあれ、さらしを巻くのだけはダメだ」
「じゃあ変えます」
「何に?」
「サランラップ」
「……(絶句)」+よろける。
「コーチ、いい塩梅(あんばい)に追い風になってきました」
「いい塩梅といえば、菅原道真だ。東風(こち)吹かば 匂い起こせよ 梅の花……」
「はあ? くさっ! コーチ、やりましたね」
「すまん、プーしてしまった。プーチン大統領に敬意を表したんだよ」
と、とぼけた顔して、コーチは一首、詠んだ。
コーチこけば においに怒るよ 高梨沙羅
わが思うメダルは 金きら大判小判ざっくざく
沙羅ちゃん、ドッと疲れて、尻餅ついてしまった。
「すまん、すまん。ところで、沙羅の好物は何だったっけ? 長崎の皿うどん?」
「大好物はサラミ。サラミなら何皿でもOK」
「サラダも大好きだよね」
「大根サラダ、トマトサラダ、キャベツサラダ、ブロッコリーサラダ……野菜サラダは体にいいです。血液がさらさらになります」
「1本でもニンジン、古くなってもサラダ。皿に盛らなくてもサラダ。サラダの食材は豊富だな」
「スペインにあるのは、サグラダ・ファミリア贖罪(しょくざい)教会」
「いうじゃないか、沙羅。スペインといえば、画家のサラダトール・ダレ」
「それをいうなら、サルバドール・ダリでしょ」
「そうともいう」
とコーチは誤魔化し、話題を変えた。
「ゆうべ、音楽聴きながら、おれの愛読誌を読んでいたよね」
「『サライ』のことですか」
「若い子が『サライ』を読んで、古文のおさらいをするなんて、渋いよ、渋い、渋江抽斎(しぶえちゅうさい)!」
「『渋江抽斎』って森鷗外の小説ですよね」
「えらい! 沙羅はアスリートバカじゃない。渋江抽斎は、江戸時代の医師で書家だ」
「そうか、しょうか、しょかだった」
「乗って来たな。乗るといえば、試合前にいつも聞いている音楽は、何だ? オランダ民謡の『サラスポンダ』か」
「民謡じゃありません。クラシックです。私は民謡を聞く気は、さらさらありません」
「クラシックのある暮らし、最高! 曲は何だ?」
「サラサーテの『チゴイネルワイゼン』です」
「『チゴイネルワイゼン』ってどんな膳? なんちゃって。沙羅は、ちごい(違い)のわかるよく寝るアスリートだ。チゴイネルワイゼン」
「……」
「沙羅は頭がいいよね。日本史の『ばさら大名』のこともよく知っていたし、世界各地で開かれる大会にいっぱい出場しているから、世界の地理や歴史にも詳しい。サラセン帝国やサラエボ事件のこともよく知っている」
「サラエボといえば、オーストリアの皇太子が暗殺され、第一次世界大戦の引き金となった場所ですよね」
「えらい! エボダイ、エボ兄弟、エボラ熱なんちゃって」
「(絶句)」
「沙羅は城島明彦のデビュー作『けさらんぱさらん』を読んだことがあるか? あるはずないか」
「読んでいません。『祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理(ことわり)をあらわす』で始まる『平家物語』なら少し読んだことがあります」
「沙羅はすごいな。顔もかわいいし、根性もあるし、ヤンキースに移籍した田中マー君に目元の感じがちょっと似ている」
「う~ん、それってほめ言葉じゃないでしょ。乙女心が傷つく~う」
「ごめん、ごめん。オリンピックが終わったら、更紗(さらさ)の着物をプレゼントするから、許して。はてさて、もうじき沙羅の出番だ。沙羅の技の魅力をすべてさらけだすことを恐れるな! 自分をさらけ出してこそ、沙羅だ! いざ、さらば!」
励ましの言葉を口にした頭のハゲが増したコーチは、自らが連発したダジャレにまんざらでもない表情で去っていったのでありました。
(城島明彦)
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