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2014/01/20

テレ朝55周年記念ドラマ「三億円事件」「黒い福音」の7つの共通点とは!?

たけしド迫力怪演+竹内結子は迫真演技

 テレ朝開局55周年記念と銘打った松本清張原作の2夜(土曜・日曜)連続ドラマ「三億円事件」「黒い福音」は、よくできたドラマで、文句なく面白かった。

 いい役者(「三億円事件」の主役は田村正和。「黒い福音」は北野たけし)を使い、たっぷり金と時間をかけ、腕のいい監督を起用し、時代考証にも力を入れた作品は、見ごたえがあるということだ。
 
「黒い福音」の出演者では、大きな一軒家に住み、聖書を翻訳している〝謎の美女〟を演じた竹内結子が秀逸で、目をみはる演技をしたのが印象的だった。

 ビールのCMでは、〝美しい顔立ちの笑顔だけの女優〟という印象しか受けないが、ドラマでは敬虔なキリスト教信者である表情と、悪に手を染めた過去を持つ翳(かげ)をただよわせた表情が複雑に錯綜する演技は、見ていて引き込まれた。
テレビドラマでなく、映画だったら、間違いなく助演女優賞ものだ。

 どの民放も、ふだんは、見る気にならない〝ちゃらちゃらした安っぽいドラマ〟しかやっていないが、本気になればこういうドラマがつくれるのだから、この精神を今後のドラマづくりに活かしてもらいたいものだ。


ドラマ「三億円事件」「黒い福音」には、7つの共通点があった


①松本清張原作であるということ

 「三億円事件」の原作は、短編集『水の肌』収載の「小説三億円事件――米国保険会社内報告書」、「黒い福音」の原作は、同名の長編小説『黒い福音』。

 どちらの小説も、当時の警察が調べ上げた数々の事実・証拠などを踏まえながら、清張独自の推理と史観による〝独創的なサスペンス仕立て〟になっている。

 「小説三億円事件――米国保険会社内報告書」は、昭和50年(1975)に週刊誌連載後、単行本化され、『水の肌』収載の「黒い福音」は、事件が起きた1959年秋から週刊誌に連載され、1961年に単行本化された。

②どちらも実際におきた社会的大事件だったという点

 「黒い福音」のモデルとなった英国海外航空BOACスチュワーデス殺人事件は昭和34年(1959年)3月に起き、三億円事件は昭和43年(1968年)12月に府中刑務所前の路上で起きた。

 どちらも日本中が騒然となった大事件である。

 松本清張の「小説三億円事件」では、主役がアメリカの保険会社の調査員という設定になっているが、実際の事件でも、アメリカの保険会社が賠償している。
 
 実際の三億円事件は、東芝の府中工場の従業員の冬のボーナス三億円を奪われたが、同社も銀行も保険がおりてまったく損をしなかった。前述したように、三億円を賠償したのは保険会社であり、うち3分の2はアメリカの保険会社が支払っている。

 三億円事件は「現金強奪事件」でありながら、犯人は誰もケガさせていない点も話題になった。
 被害にあった現金輸送車は、追いかけてきた白バイに雨のなかで停車を命じられ、車を止めると、白バイの警官に扮した犯人が発煙筒をたいて、「危険だから車から出て離れろ」といわれ、運転手や警備員がその指示に従って外に出ると、犯人が現金輸送車に乗り込んでそのまま逃亡したので、誰もケガをしなかったのである。

③(ちょっとオカルト的だが)両事件には、3と4にまつわる奇妙な符合がある点

 両事件は、(こじつけめくが)「3(さんざん)と4(死)」とも読める。
 
 「BOACスチュワーデス殺人事件」は昭和34年(1959年)3月に起き、重要参考人は海外逃亡するというさんざんな目にあっている。死体発見場所は、善福寺川の「宮下橋」のやや川下(かわしも)。宮下の「み」を数字に当てはめると「3」である。犯人が病気療養を口実に離日したのは6月。6=3の倍数。

 「三億円事件」は昭和43年12月に起きた。12月の12=1+2=3。三億円事件に投入した捜査費用のトータルは9億円(9=3の倍数)。

 ④当時の警視庁が威信をかけ、総力を結集したが、どちらも犯人検挙にはいたらず、〝迷宮入り〟してしまった点

 三億円事件は時効成立、国際線スチュワーデス殺人事件は重要容疑者の海外逃亡で幕となり、やがて時効成立。

 BOACの日本人スチュワーデス殺人事件では、死体は東京都杉並区を流れる善福寺川に遺棄されていたが、着衣に乱れがなかったことから当初は自殺とされたものの、東京観察医務院で司法解剖した結果、絞殺であることが判明、しかも体内から精液が検出されたため、恋愛関係にあった男の犯行と推定された。

 スチュワーデスがカトリック信者だったことから、カトリック教会日本支部(サレジオ修道会)の38歳の神父ベルメルシュ・ルイズが浮上。遺体に残留していた精液の血液型とその男の血液型が一致。しかもその男は、教会の別の女性信者とも性的接触をしていた事実も浮上、犯人であることが濃厚となったが、教会が「病気療養」を口実に海外逃亡させ、日本の警察の捜査の手が及ばなくなり、やがて迷宮入りとなったのだ。

④どちらも、「海外」が絡んでいるという点

 三億円事件では、損害賠償をめぐってアメリカの保険会社の調査員が関係し、BOACスチュワーデス殺人事件では、英国航空会社が関係し、ベルギー人が最有力容疑者だった。

 BOACスチュワーデス殺人事件が起きた昭和30年代および三億円事件40年代当時の日本は、今日ほど国際的ではなく、「海外」が絡んだ事件は珍しかった。

⑤どちらの事件も、名刑事といわれた平塚八兵衛が関わっている点

 平塚八兵衛は、「小平事件」「帝銀事件」「下山事件」「吉展(よしのぶ)ちゃん誘拐事件」など日本の犯罪史に残る〝大きなヤマ(事件)〟を担当した昭和を代表する警視庁捜査一課の名刑事で、「BPACスチュワーデス殺人事件}や「三億円事件」の両捜査にも投入された。

⑥両事件は、当時の世相を反映しているという点

 現在の月給やボーナスの支給方法は「振込み」だが、当時は「現金払い」だった。しかし、三億円強奪事件を契機に安全な「給料の銀行振り込み化」への動きが加速した。

 BOACスチュワーデス殺人事件が起きた当時の日本は、敗戦国の屈辱感を強く引きずっており、外国人が絡む犯罪に手出しができなかった。
 容疑者がキリスト教の聖職者だったという点や、事件が発生した当時は女性の社会進出が極めて少なく、国際線スチュワーデスは憧れの花形職業だったという点も、人々の関心をあおった。

⑦どちらも、犯人と目される人物が〝聖職の壁〟〝権力の圧力〟でウヤムヤにされてしまった点

 昔は、僧侶、教師、警官、医師・看護婦などは「聖職者」といわれたが、両事件では、カトリック教会と警察官僚が圧力をかけて事件をうやむやにした。

 実際の「三億円事件」では、一般公開された「ヘルメット姿の優男(やさおとこ)のモンタージュ写真」が超有名だが、あの顔とそっくりでオートバイも乗りこなした不良青年が、犯人と目された。
 しかし、その青年は自殺。青年の親戚に警視庁の元上層部がいたことから事件をうやむやにしようとしたのではないかと噂された。

 BOACスチュワーデス殺人事件では、宗教の腐敗として報道されるのを教会がおそれ、重要参考人とされた神父を海外に逃し、殺されたスチュワーデスを採用していた航空会社は、スキャンダルが与える企業イメージの低下などを恐れて、第二次大戦の戦勝国であることを利用して敗戦国日本に圧力をかけたのである。


3月に木村拓哉主演のドラマ『宮本武蔵』

 テレ朝開局55周年記念ドラマでは、3月に木村拓哉主演の『宮本武蔵』が2夜連続で放送されるが、私は一昨年12月に宮本武蔵の著『五輪書』(ごりんのしょ)を現代語訳している。
 
 『五輪書』は、武蔵が死ぬ直前に書いた本で、二刀流の戦い方、勝つ心得だけでなく、人生のあらゆる局面に待ち受けるさまざまな敵との戦いに勝つためのノウハウを記した「人生の指南書」である。

 自分でいうのもなんだが、『五輪書』の現代語訳は何冊も出ているが、私の現代語訳が一番読みやすく、わかりやすく、スピーディに読めるという声が多く寄せられているということを(図々しくはあるが)付記しておきたい。
 未読の方にはぜひ読んでいただきたい。

(城島明彦)

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