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2013/09/23

伝説のドラマとなった「半沢直樹」の謎――番組提供スポンサー「サントリー」は、なぜ上戸彩(ライバル商品の「アサヒビール」のCMキャラ)の出演を許したのか!?

視聴者の心情を無視した「半沢直樹」のラストのひどさ 

 TBS日曜劇場の連続ドラマ「半沢直樹」は、回を追うごとに視聴率はうなぎのぼりとなり、伝説のドラマ入りを果たした。

 まれに見る高視聴率を記録した主な理由として挙げられるのは、悪が栄える世の中に辟易している視聴者が、主人公半沢直樹が悪人を次々と〝倍返し〟でやっつけるという「勧善懲悪」に胸をスカッとさせたからだ。

 ところが、TBSは何を勘違いしたのか、最終回のラストを「半沢直樹左遷辞令」で終わらせた。

 ほとんどの視聴率は、後味の悪さを感じて不快になり、憤(いきどお)ったはずである。

 半沢直樹が頭取室に入っていくところでカメラを引き、後は視聴者に想像させるという余韻を持った終わり方にすべきだった。

 続編を登場させたいのなら、そういう終わり方にしておいても、続編の冒頭で「実は頭取室で」というやり方ができる。その方が話題性がある。
 にもかかわらず、わざわざ視聴者を不快にさせる演出にするという考え方がわからない。


ドラマ「半沢直樹」には、もう1つの見方・楽しみ方があった

 「番組提供スポンサーと主要登場人物を演じた役者のCMとの関係」という観点でドラマを見ると、もっと面白くなった。

 「半沢直樹」の番組提供企業は、日本生命花王サントリー東芝の4社だった。

 ○堺雅人(半沢直樹役)……妻の菅野美穂がサントリーウィスキー角瓶のCMに出ている。
   堺自身はトヨタの「プリウス」のCMキャラの一人。
 ○香川照之(半沢の父を死に追いやり、悪の限りをつくす大和田常務役)……花王ヘルシア緑茶のCMに出ている。
 ○及川光博(半沢直樹の同期で親友役)…妻の檀れいがサントリービール「金麦」に出ている。
 ○壇蜜(愛人役)……サントリーの新CMに起用。最終回でそのCMが流れた。


なぜ、上戸彩を半沢の妻役に起用したのか!?

 「主人公半沢直樹の妻役がなぜ上戸彩なのか」について疑問を抱いたり、違和感を覚えた視聴者は多かったと思われる。
 なぜなら、彼女は、番組提供企業のライバル企業のライバル商品のCMに長く出ているからだ。
 上戸彩はアサヒビールのCMに、長期にわたって登場している関係で、「上戸彩=アサヒビール」というイメージはかなり浸透している。

 テレビ局や広告代理店は、番組を提供してくれるスポンサーに必要以上に気を使い、ドラマの中に競合企業の商品を絶対に登場させないのが常識である。
 と同時に、ライバル企業のCMに起用されている俳優も使わないのが普通だ。

 それなのに、サントリーがスポンサーになった「半沢直樹」に重要な役で起用された。なぜ、なのか!?
 しかも、彼女は「ミスキャスト」ではないかとみる視聴者も多かったようだ。
 彼女は、飲料では、三ツ矢サイダーのCMキャラにも起用されている。


CMから考えた半沢直樹の妻役候補は、①菅野美穂、②檀れい、③綾瀬はるか、④天海祐希、⑤井川遥
 

 話題づくりや視聴率アップを狙うなら、サントリーのCMキャラである実生活の妻である菅野美穂か、半沢直樹の親友役を演じた及川博光の妻である檀れいを起用するという手があった。

 どちらもサントリーのCMキャラとして知られているが、彼女らを起用するとサントリー色が強くなりすぎて、他のスポンサーが難色を示した可能性はなきにしもあらずではあるが、菅野美穂と檀れいをチョイ役ででも出せばもっと視聴率は上がったはずだ。

 特に菅野美穂は、花王の化粧品ソフィーナのCMに井川遥、石原さとみと一緒に出ている。ただし、井川、石原は、どちらも銀行員の妻というイメージに欠ける。

 半沢直樹の妻役は、菅野美穂や檀れいが、スケジュールやその他の事情で無理だったなら、スポンサー間のバランスを取るという意味で、共同スポンサーである日本生命のCMに出ている綾瀬はるかか、東芝のCMに出ている天海祐希という手もあった。
 ただし、天海は病気で倒れたし、綾瀬はNHKの「八重の桜」最優先で、出演が難しかったかもしれない。

 「ショムニ」の江角マキコも花王の化粧品のCMに出ているので候補の一角となりえたが、明治安田生命のCMに出ているので起用は無理。

 竹下景子も日本生命のCMに出ている。しかし、年齢的に考えると倍賞美津子がやった悪女しか見当たらないが、彼女に悪女の演技は無理。驚いたのは、倍賞美津子のシワシワのばあさん顔だった。

 私はかつてソニーの宣伝部にいた時代があるが、これだけのめぼしい半沢の妻役候補がいるなかで、よりによって、ライバル企業のライバル商品のCMタレントを起用するという神経がわからない。

 東芝のCMキャラクターの福山雅治は1枚看板で扱いなので、起用は無理だったろう。しかし、日本生命のCMキャラの岡田準一を重要な役で出演させる手はあった。
 岡田は、 「半沢直樹」のなかで繰り返し流された日本生命のCM(同じ人物の20代から50代が一堂に会し、会話するCM)に出ており、視聴者に与える印象は強かったのも、もったいないとしかいいようがない。

 上記の配役が実現しなかった裏には、ギャラの問題やプロダクションの意向が絡んだという事情もあるかもしれない。

(城島明彦)

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