「八重の桜」第32回13.9%(1.5%ダウン)VS「半沢直樹」第5話29.0%(1.4%アップ!――視聴率は、今度は「倍返し以上」だった
「半沢直樹」の瞬間最高視聴率は31%
「半沢直樹」人気が示しているのは、「正義は勝つ」が現実ではなかなかなく、せめてドラマで主人公が権力者に敢然と挑んで、完膚(かんぷ)なきまでに叩きのめす話に拍手喝采するという図だ。
現実に不満をいだいている「やられっぱなしの人」がいかに多いかの証拠だ。
第5話は、事が簡単に運び過ぎ
これまでの国税庁の査察話と比べると、8月11日の第5回のその後の話の展開と結末がちょっと調子よすぎた観なきにしもあらずだが、威張り散らしていた支店長の悪事を暴いて土下座させるという図はスカッとするが、支店長の妻が自分の妻と重なって手心を加えるという「情に揺らぐ」経緯は、いささか安易で歯切れが悪かった。
「倍返しだ!」「10倍返しだ!」と、さんざんいってきた男が、情にほだされるという演出は、いかにも安っぽい。
半沢を突き動かしてきたものは、平然と弱者をつぶしてしまう強者の悪であり、それに対する副賞うの念だ。
ちょっとした情でそれが揺らぐような人間なら、とうの昔に妥協してしまって復讐のことなど忘れてしまうか、適当な言い訳を設けて忘れてしまっているはず。
常識的に考えると、ネジを製造する町工場を経営していた自分の父親(笑福亭鶴瓶)を自殺に追い込んだ銀行へ就職する人間はまずいないし、ドラマでは父親を自殺に追いやった銀行マン(香川照之)が、実は半沢直樹の人事的を含めた生殺与奪の権利を一手に握っている現常務がいるという話や、その男にどうやって復讐するかということも、現実にはありえない。
半沢直樹は〝平成の庶民版水戸黄門〟か
5億円を猫ババした実業家の愛人(壇蜜)が、いとも簡単に旦那を裏切って、海外の隠し講座の通帳を半沢直樹に渡すという設定も、現実にはまずありえない。
そう考えると、かなり割り切ったご都合主義的なストーリーであり、人物構成といわざるをえないが、逆の言い方をすると、そのような大胆で劇画的な話に仕立てたことで、絵にかいたような勧善懲悪劇となり、見ていてスカッとするのかもしれない。
最後に、それまで自分をいじめてきた支店長に土下座させて許してやるところなどは、水戸黄門の印籠場面と共通するところがあり、剣道の達人であるという設定も含めると、半沢直樹は〝平成の庶民版水戸黄門〟ともいえる。
一方、「八重の桜」は同志社の舎監となって新しい人生を歩む八重の話
八重、八重の母は、京都にある八重の兄覚馬の屋敷に移り住んで暮らすなかでの出来事が描かれた。
覚馬と生き別れた先妻との間に生まれた娘が義母に反発していたが、やがて同調する。
後妻を演じている女優(谷村美月)は、言葉数の少ない女で、最初はおどおどする女性として演じていたが、次第に覚馬の妻として女堂々と振舞い、八重や八重の母に暗黙のプレッシャーを与える役柄を名演していた。
八重は、やがて同志社大の創設者新島襄(オダギリジョー)と知り合い、再婚する展開になることは歴史が示しているが、そこへ至るまでの八重の心境や言動を大河ドラマは描いている。
同志社大学は、薩摩屋敷跡に建てることから、西郷隆盛と八重が直接会話する場面がドラマにはあったが、現実ではそういうことがあったかどうかは不明だ。
綾瀬はるかの右の額の「カンスジ」(血管の盛り上がり)がいい
八重を演じる綾瀬はるかの右の額に浮かぶカンスジが、なかなかいい。
若い女性としては、美しくはないが、何かの拍子に浮かび出る。
これを自在に操っているとすれば、名女優だ。
(城島明彦)
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