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2012/10/23

3連勝して3連敗はないぜ、ドラゴンズ――後々の語り草だ、2012年セ・リーグCS決戦を総括する!

勝てる試合を落とし、原辰徳を「伝説の男」にしてしまった高木守道

 セ・リーグのCS(クライマックス・シリーズ)の2位・3位戦で、中日は、苦手のヤクルトに勝った勢いを駆って、実戦試合から遠のいていた優勝チームの巨人に3タテを食らわせ、王手をかけた。

 あと1勝!

 そのときの巨人の心境を、原監督は、
 「徳俵(とくだわら)に足がかかった状態」
 と回顧したが、それは彼一人の心境ではなく、巨人の選手全員の気持ちだったに違いない。

 シーズンでは、他チームを圧倒し、寄せ付けなかった巨人だったが、中日とは互角だった。

  巨人 11勝10敗3分。

 シーズン中は、ぶっちぎりの強さを見せた巨人だったが、中日に対してだけは、
 「戦いにくい。やりづらい」
 と思っていたのだ。

 その不安は的中し、CSではいきなり3連敗だ。
 巨人の不安はピークに達していたはずである。

 そのとき中日が気をつけなければならなかったのは、
 「絶対に開き直らせない」
 ということだった。

 だが、高木采配は、それをやってしまった。
 「眠れる獅子」をたたき起こしただけでなく、襲いかからせるような勢いまでつけさせてしまった。


「あと1勝」の第4戦の平凡な采配で、流れが変わった――中日が先取点を奪取すれば、一気に勝負が決まるはずだったが……

 3連敗してもう後がなくなっている巨人の心理を考えると、中日は、どんな手を使ってでも先取点を奪取しにいくべきだった。

 戦術としては、早い回に意表を突くバント、スクイズなどあらゆる奇策・奇襲を連発して、巨人選手の動揺を誘う手が効果的だった。
 具体的には、当たりに当たっている先頭打者・大島に、いきなりバントさせるべきだった。
 これが高等戦術だ。

 バントヒット狙いだが、バントに失敗して2ストライクに追い込まれたらヒッティングに切り替える。

 続く2番荒木にも、「まさか」と思うバントをさせる。こちらも2ストライクを取られたら、ヒッティングに切り替える。

 これで終わりではない。3番にもバントさせるのだ。

 「中日は、何を考えているのか」
 と、巨人は不安になる。
 3連勝の余裕があるからこそできる「考えられない奇策」である。
 巨人の選手は、
 「中日は余力がある」
 と気持ちの上で圧倒されるはずだ。

 さらに、1番・2番・3番の誰かが塁に出たりしたら、巨人選手の不安はさらに高まっただろう。

 せめて、これぐらいのことを考えなければ――。

 私は、いま、剣豪・宮本武蔵の『五輪書』の現代語訳に取り組んでいるが、武蔵の戦法は、徹底的に敵の裏を欠く奇襲・奇策ばかりやっている。

 単なる思いつきでそうしているのではなく、相手の心理をよみ、動揺を誘うことで勝利を得ようとしたのであって、理にかなっている。

 敵を不安に陥れ、敵が動揺したところを、弱点を狙って攻撃するのだ。

 しかし、中日の高木采配は、3連勝して余裕があったにもかかわらず、奇策・奇襲で揺さぶって、敵を浮き足出させようとする知恵がまったくなかった。

彼がやったことは、1番~3番の打者に平凡に打たせただけだった。
その結果は、1番も2番も3番も、同じライトフライであった。


ヒットは出るが、点に結びつかず、残塁の山――中日の悪いパターンが出た

 ◆0対0で迎えた2回表:中日の攻撃
  2アウト1塁・2塁(2塁走者和田・1塁走者森野)で、先制点を取る絶好のチャンスに谷繁が3振。無得点で終わった。

 ●2回裏:巨人も2アウト満塁を生かせず、無得点。

 ◆3回裏:巨人の攻撃 2点先取!
  先頭打者・長野、内野安打で走者1塁。次打者松本は倒れたが、走者進塁。
  坂本が2塁打を放って、巨人1点先取。
  続く阿部もヒットで、さらに1点追加。

 ◆4回裏:中日の攻撃
  2アウト満塁で、打者谷繁。レフトフライで得点ならず。

 この時点で、中日に嫌なムードが漂った。

 ◆6回表:中日の攻撃
  ふたたび、2アウト満塁(平田、森野連続安打に谷繁四球)で、打者ソーサ(投手)に代打・山崎を送るも、凡打で得点ならず。
  この時点で、中日の敗北は決まったようなものである。
  試合結果、3-1で巨人の勝ち。


点差を読めなかった高木守道

  第1戦 3-1で中日 その差2点
  第2戦 5-2で中日 その差3点
  第3戦 5-4で中日 その差1点

 第3戦は勝ちはしたが、1点という僅差での勝利だ。
 強打を誇る巨人が、第1戦では1点、第2戦では2点しか取れなかったのに、第3戦では4点を取った。
 その事実から、中日は、
 「実戦から遠のいていた巨人が目覚めてきたのではないか」
 と考えるべきだった。
 
 「目覚めたものの、完全に目覚めさせないようにするにはどうするか」
 と考えないといけなかった。

 「どんな戦術が効果的か」
 と考えれば、前述したような奇襲・奇策で、巨人をキリキリ舞いさせることが頭に浮かぶはずだった。
 しかし、そうはならなかったところに、中日の敗因があった。


第4戦は、安打数でまさって、勝負に負けた 1-3で中日が負けた第4戦のヒット数は、

   中日 11本
   巨人  6本

 残塁の山である。いかに効率の悪い攻めをしたかということだ。
 拙攻が多い試合は、相手チームがそれ以上にミスをしない限り、勝てない。

 この大事な試合を境にして、中日は大失速。得点力がガクンと落ちた。

  第1戦 3点
  第2戦 5点
  第3戦 5点
  第4戦 1点
  第5戦 2点
  第6戦 2点

 落合監督時代の中日は投手力によって僅差で勝つチームだったが、高木監督になって、大味な野球をするようになり、打線勝負で勝つ試合も多くなった。
 CSの第3戦までがそうだった。
 しかし、打線は、短期決戦であっても、水ものであることに変わりはない。

 貧打で勝つ野球ができなかったところに、中日の敗因があった。

(城島明彦)

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