NHK大河「平清盛」(5月20日放送視聴率11.8%)のダメさ加減――なぜもっと人物を絞れなかったのか
話を絞るか、わかりやすくすれば視聴者は観る
NHK大河ドラマ「平清盛」も、第20回「前夜の決断」(5月20日放送)で、やっと保元の乱までたどり着いた。
視聴率は依然低迷しているが、それでも番宣(番組宣伝)的な紹介番組を流したせいか、視聴率は4月22日の11.3%を底に、翌週以降、13.9%、13,5%、14.7%とそれなりに回復してきた。
視聴者は正直で、前回は登場人物が絞り込まれいて話がわかりやすく、視聴率も、それなりに健闘した。
だが、「前夜の決断」では11.8%に低下した。その理由は、あまりにもはっきりしすぎている。
関係者に均等にスポットを当てる必要はない
保元の乱(1156年)は、「体制派VS非体制派」の覇権争い。
「白河上皇が院政を開始して以来の、天皇家、摂関家、武家(源平)による〝三つ巴(どもえ)の鬱屈(うっくつ)した感情〟がついに噴火した」という構図だが、人物関係が入り組んでいる。
そこにあるのは、骨肉相食(あいはむ)む〝おぞましい〟人間関係。
①天皇家……後白河天皇(弟)VS崇徳上皇(兄)
②摂関家……藤原忠通(兄)VS藤原頼長(弟)
③武家(源平連合軍VS源平連合軍)
平家……清盛(甥)VS忠正(叔父)
源氏……義朝(長男)VS為義(父)・為朝(弟)
※次の平治の乱で「さらし首」になる信西(しんぜい/阿部サダヲ)も体制派として加わり、暗躍する。
これだけでも、たいへんな人数で、人間関係が把握しづらい。
それなのにNHKは演出的に欲張って、清盛の息子や義朝の妻妾ら、何人もの人物をさらに登場させ、セリフまでいわせた。
その結果、誰が誰で、誰と誰がどういう関係にあるのかという人物関係がきわめてわかりづらくなり、話を十分理解できた視聴者は皆無に近いのではないか。
NHKは、使い勝手が悪い「機能満載の家電製品」と同じ
誰もが子どもの頃の歴史の時間で習う「保元の乱」ということで、今回のドラマを観た人もいたに違いないが、ツギハギ的な演出に辟易(へきえき)したのではないか。
NHKの演出家心理は、家電製品の企画者に似ていると私は思った。
「あの機能も、この機能も、みんな付けないと消費者は買ってくれないのではないか」
その結果、機能満載となり、操作もややこしく、使い勝手が悪くなり、売れない。
そういう製品が世の中にはゴマンとあるが、NHKが「平清盛」でやっているのはまさにそれ。
枝葉はばっさり落とし、シンプルな構成、シンプルな人間関係に絞り込むことは、脚本家や演出家にとっては「不安」だろうが、そうしないと話がすっきりしないし、まとまりを欠く。
誰も知らない(あるいはそれに近い)か、名前ぐらいは知っていても関心がない歴史的人物を登場させても、視聴者はソッポを向く。そういうことだ。
(城島明彦)
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