「江~姫たちの戦国~」、いよいよ佳境に――「姫の十字架」(第34回)「幻の関が原」(第35回)
女優寸評
上野樹里は、戦国の姫の髪型や衣装がよく似合い、目がパッチリとした文句の受けられない美人顔で、さすが女優と思わせる。惜しむらくは、声質のせいか、時代劇のセリフ回しに難がある。NHK大河で主役を張れる機会はめったにないのだから、存在感を見せつけるチャンスだが、そこまでの余裕はないのかもしれない。
京極高次(きょうごくたかつぐ)の正室となった次女の初役の水川あさみは、色白の面長な顔にブルー系の着物が映えて、これまた戦国時代の髪型がよく似合っている。裏返ったような声が気になるときもあるが、「こんなにきれいだったのか」と思う表情をすることがよくある。
豊臣秀頼(ひでより)の母である淀殿役の宮沢りえは、映画やドラマに出るたびに、だんだん演技が上手になってきた。彼女の着物姿は、3姉妹の長女にふさわしい貫禄がある。
修羅場をかいくぐってきた浅井3姉妹に対し、流れに身をまかせるタイプの女である京極龍子(初の義姉)を演じている鈴木砂羽は、NHKらしからぬ色気を全身からまき散らしている。
細川ガラシャを演じた女優ミムラは、「細面(ほそおもて)で、清らかでありながら、芯の強さを秘めた」ガラシャのイメージにかなっているが、ミムラという芸名は何とかならないか。
前々から思っていたことだが、小雪とか優香とか、名前だけの女優が増えている。幼稚園児ではあるまいに、いや、芸者とかキャバクラあたりのおねえちゃんの源氏名とか犬や猫のようなペットの愛称ならそれでもいいが、きちんとした役者をめざすなら名字もつけたらどうか。
細川ガラシャの死
9月4日放送の「姫の十字架」(第34回)では、キリシタン細川ガラシャの死が描かれた。
三成は、秀吉ひとすじの能吏タイプの男である。
秀吉にひたすら尽くしたが、天下人(為政者)としての力量はなく、いくさは上手ではなかった。
その三成が徳川家康との直接対決が迫るのを察知し、豊臣家の家臣だった諸大名が裏切らないように、彼らの妻子を人質として一か所に集めようとした。
妻子狩りのような三成のやり方は反発を買う。
細川忠興の正室となっていた明智光秀の娘ガラシャもその対象となったが、彼女は拒み、屋敷を包囲され、死を選ぶことになった。
キリシタンは自殺を禁じているので、彼女は自刃できず、家臣に槍で胸を突かせて死んだのである。
忠興とガラシャの仲を取り持ったのは、織田信長である。
その信長を父光秀が討った日から彼女の人生は一変した。
彼女がキリシタンとなって信仰に救いを求めたのは、「主君を討った反逆者の娘」という重い十字架を背負って生きなければならなくなったことと深く関係している。
関が原の合戦に遅刻する秀忠
慶長5年(1600年)6月、家康は、謀反の疑いがあるとの口実で、アンチ家康の急先鋒である会津120万石の大名上杉景勝を攻める。いわゆる「上杉攻め」である。
このとき江の3番目の夫となった家康の跡取り息子秀忠は、総大将を任ぜられ、出陣する。
それを見た三成は、ここぞとばかりに挙兵、家康の留守居役がこもる伏見城を攻めた。
状況が急変したことを知った家康は、ただちに引き返して、三成との対戦に向かう。
秀忠も家康に命じられて方向転換し、西国を通って三成との決戦場へ向かうが、途中で上田城の真田昌幸(さなだまさゆき)・幸村(ゆきむら)親子を攻める。
上田勢3千に対し、秀忠勢3万と兵力では圧倒していたが、いくさ慣れしていない秀忠は、いくさ巧者で策略家の真田親子に翻弄されてしまって、落城できず、とうとう諦めて家康の本軍に合流すべく、西へと向かった。
初の夫京極高次は、居城の大津城で大奮戦して西軍の進攻を食い止め、関が原の合戦後、家康から働きぶりを賞賛されることになり、男を上げる。
秀忠はといえば、真田攻めに手間どったことに加え、木曽路でも難渋し、秀忠は天下分け目の関が原の合戦に大遅刻することになる。それが、「幻の関が原」(第35回)である。
※関東地区視聴率(この項のみ 9月15日追記)
第34回 17.8%(やや健闘) 第35回 15.4%(8月の低水準に逆戻り)
(城島明彦)
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