死にたい人たちへ。死ぬのはいつでもできる。もうちょっと先送りしないか
上原美優の死
タレントの上原美優が自殺したというニュースに接して思ったことがある。
直接彼女を知っているわけではないが、テレビ番組に出ていた彼女から受けた印象は、
「今どき珍しい〝貧乏人の子だくさん〟の家庭で育ちながらも、明るく元気で頑張っている健気(けなげ)な若い娘」
ということだった。
そんな彼女が24歳で死んでしまった。
先日も、俳優の田中実が44歳という若さで自殺したばかりだ。
死ぬのはいまじゃなくてもできる
死にたいと思う気持ちの強い人たちにいいたい。
「いまでなくても、いつでも死ねる」
「やり残していることがいっぱいあるだろう。それをやってからでも遅くない。もう少し死ぬのを先送りしてみないか」
私は、若い頃に一度死のうとしたが失敗した。
以後、何度も死の誘惑が襲ってきたが、あるときは、
「やり残していることがある。あれを片づけるまでは死ねない」
などという、ささいな理由で何度も自死することを先送りした。
また、あるときは、
「部屋をきれいに片付けてから」
と思っているうちに、死の誘惑の影が遠のいた。
そういうことを繰り返してきて、気がついたら、60代半ばに達していた。
繰り返し襲ってくる「うつ」に負けるな
自殺する人や自殺したいと考える人は、自分で気づいているかいないかの違いはあるだろうが、間違いなく「うつ病質」である。
心が弱ったり、折れそうになるときは、体の状態がよくないときである。
睡眠不足が続いたり、風邪を引いたりして体調を崩すと、精神が弱くない人でも、弱気になる。
老いた両親より先に逝けば、両親は死ぬよりつらい思いをして生きていかなければならなくなる。
親しい友人や親戚の人も同じだ。
死にたくなくても、病気で死んでいかざるを得ない人もいっぱいるのだ。
死ぬほどつらくて苦しくても、耐え忍んで、その人たちのために生き抜かないといけない。
「誰かのためにだけ生きる!」
「死ぬのは、いつだってできる。だから、もう少し、この世に踏んばっていよう」
そういう考え方に切り替えられるように、自分自身を説得しよう。
たっぷり眠れば心も元気を回復する
死の誘惑は、繰り返し襲ってくる。私自身についていえば、いまでもそうである。
死の誘惑に襲われると、
「死んだら、楽になれる。そうするしかない」
という暗鬱(あんうつ)な気持ちが、頭の奥でエコーし始める。
「現実から逃げたい」という強烈な思いがそこに重なる。
いかなる理由であれ、
「死にたい」
と考える自分が普通ではないということは、自分自身でよくわかっていても、その思いを頭から追いやることができない状態になる。
明らかに精神の病にかかっているのだが、そのことに気づくだけの心の余裕がなくなっている。
「医者に行こう」
と考えられる人は、まだ軽症なのである。
死の誘惑を受け入れようとする思いが強くなると、そのことばかりを考えてしまうので、死を脱しようとする思考能力が麻痺してしまう危険な状態になっていく。
人間には生き続けようとする本能的な欲求があるが、それが封じ込められてしまっている。
そこまでいかないうちに医者に行くのが一番だが、忙しかったりして行けない場合は、「抗うつ薬」を飲んでよく寝ると症状が回復する。
親しい友人に会って楽しいひとときを過ごしても、別れて一人になると、その楽しさの何倍かの孤独感に襲われるそこが、うつ病質の人間のやっかいなところだ。
薬は飲まないにこしたことはないが、うつ気質の自覚がある人は「睡眠導入剤」を普段から用意しておき、ふさぎ込んできたら服用した方がいい。
薬局へいくのが嫌なら、誰かからもらうという手もある。
太陽の光が直ししてくれる
気持ちがふさいだら、できるだけ太陽に当たらないといけない。
昼間の時間が取れないときは、室内でまぶしいくらいの電球をともし、その光を浴び続けると元気が回復する。
十分に眠ることが大事だ。
たくさん眠れば、体の疲れも取れる。
体力が回復したら、笑える映画のDVDとか、勇気が出るDVDを2~3本借りてきて見ることだ。
風呂に入って、血のめぐりがよくなると、元気が出る。
体がさっぱりしたら、好きな果物を食べたり、外出たり、レストランで好きなメニューを食べたりするといい。
死ぬのはいつでもできる
死にたいと思ったときは、こう考えるようにしたい。
「自分が死ぬことで悲しんだり、苦しんだりする人がいる。つらくても自分が生きていると、そのことを喜んでくれる家族や友人がいる。どんなに苦しくても、もう少しだけ死ぬ時期を延ばせないか」
私はいまでも、死ぬことを1日先送りし、2日先送りし……それが1か月になり、2か月になり、半年になっていくと、体も心も、また元気になってくる。
人生は楽しい日々ばかりじゃないが、悲しい日々ばかりではない。
いままでの人生で、そのことはわかっているはずだ。
いまはつらくても、じっと耐えてがまんしていれば、必ずまた楽しい日々がやってくる。
だから、いま死んではいけない。
いつでも死ねるのだから。
(城島明彦)
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