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2011/04/22

NHK大河「江~姫たちの戦国」の江姫は〝剛〟。2代将軍秀忠を尻に敷いた

浅井家は夫の浮気を許さない性格

 放送されるのはまだまだ先のことになるだろうが、江姫は再々婚した将軍徳川秀忠を、尻に敷くつよ~い女性に成長するのである。

 しかし彼女は、亭主を操縦する能力は抜群にあったが、折衝力とか根回しといった政治的な才能はなく、一方では、子どもへの愛情の注ぎ方も誤ってしまい、春日局という狡猾(こうかつ)きわまりない女の出現によって、結果的には自分自身の寿命を縮めることになってしまうのだ。

 NHK大河ドラマでは、次女の初姫の描き方が弱く、それを補うためか、やたら食い気のあるお姫さまという描き方で印象を強めようとしているように感じる。

 初は、秀吉の側室になった京極龍子(きょうごくたつこ)のお兄さんの京極隆次(たかつぐ)に嫁ぐが、子供ができず、江の娘のひとりで名前が同じ初姫を養女にもらい、その娘を夫と側室の間にできた子供(長男)を結婚させて京極家の跡を継がせている。
 
 初は、子供を産めなかったという負い目はあったから側室を認めざるを得なかったが、夫も側室をどんどん増やして初を苦しめるというような暴挙はしなかったようだ。

 秀吉の正室ねね(おね)は、自分に子供ができなかったことから、女好きの夫が次々と女と関係を結んでも大目に見ていた。
 そういう例もあるから、初は女性としては幸せだったのかもしれない。

 茶々も、親の仇の秀吉にたらしこまれて側室になってしまうが、関係ができるとひたすら秀吉に愛情を注ぎ、跡継ぎまでもうける。

 こう見てくると、浅井3姉妹は、いずれも、ひとたび嫁したら夫だけを愛し、生涯その夫につくすという貞操観念が強くあったことがわかる。

 彼女らの母親のお市の方も、二度結婚したとはいえ、二度目の夫とともに自害しており、夫に貞節をつくしたといえる。

 江は秀吉のさしがねで三度も結婚させられるが、そのつど夫につくそうとしている。そのかわり、夫も自分に愛情を注ぐことを強く求めた。

 貞操観念の強かった3姉妹だからこそ、NHKが取り上げたのかもしれない。


江姫は特に潔癖症

 創業者がどこまで自分が起こした事業や組織を確立しているかの度合いにもよるが、
 「初代に比べ、たいしたことをしない」
 というのが「2代目」に対する一般的な見方だ。

 ここでいう創業者は家康であり、2代目とは江が再々婚した相手秀忠のことだ。

 徳川秀忠は、関が原の合戦に大遅刻したことでもわかるように、戦争には弱いところをさらけ出し、立派すぎた親父の陰に隠れてかすんでしまっているが、自分が将軍になると親父が決めた大名の配置をひっくり返す大胆な人事を敢行するなど、幕藩体制の基盤を揺るぎないものにしてから3代将軍にバトンタッチしており、「俺の築いたものを自由に壊してもいいぞ」というなど、2代目としての評価は高いのである。

 江姫は、そんな男を尻に敷くのだから、すごい女なのだ。
 江の「ごう」は「剛」であり、豪快の「豪」、そして積極果敢な「GO!」、「ゴーイング・マイウェイ」のGOでもある。 
 血液型はB型だったかもしれない。

 江は、夫の精力を弱らせて浮気させまいとしてか、ぼこぼこ子供をつくった。女5人、男2人である。

 しかし、将軍秀忠は、江の目を盗んでたった1回だけ若い女と浮気し、子供を1人つくった。
 静(しず)という女で、江より10歳ほども若かった。

 種がよかったのか、畑がよかったのかはわからないが、その子が成長し、名君といわれる会津藩の保科正之(ほしなまさゆき)になるのだ。

 家光は成人してのち、母の江が死んでから、異腹の兄弟がいることを知らされ、厚遇することになるのである。

 NHK大河が、そういう江姫の性格をこれからどう表現していくかが見せ場のひとつになる。


春日の局との暗闘 

 江が生涯でもっとも嫌った女は、春日の局である。

 江は、秀忠との間にたて続けに4人の女の子を生んだあと、長男家光、次男忠長を生むが、家光は乳母に育てられた。
 その乳母が春日局である。

 江と春日局(かすがのつぼね)が3代目の将軍を誰にするかをめぐって対立し、暗闘を繰り広げるエピソードは、「忠臣蔵」の松の廊下ほどではないにしろ、あまりにも有名で、春日局が大御所家康に直訴した結果、3代将軍家光が誕生することになるが、そのことで江は顔に泥を塗られる。

 頭越しにやられて赤っ恥をさらしたのは秀忠も同じだが、文句をいえなかった。
 そういうところは、江から見ると実に情けない亭主だった。

 江戸時代は長子相続であるし、家光は、結婚後10年目に生まれた待望の男の子だったからは、識的には、江は長男の家光を次代将軍に望んだと思えるが、実はそうではなく、次男の忠長を将軍にと望んだのだ。

 長男が病弱だったとか、将軍の器でなかったというのなら別だが、そうではなかったから問題が起きたのである。

 江が自分の乳を与え、自分のそばに置いて育てることができたのは次男の忠長の方という事情があって、母親としての情愛が忠長に注がれたため、本来なら長男である家光を次の将軍にと望むべきところを、次男を推挙してしまったのである。
 
 江の母としての弱さが裏目に出たのだ。
 
 この一件が尾を引いて、同じ腹を痛めた子供でありながら、忠長はのちに自害に追いやられることになるのだから、江の罪は深い。

 江が死ぬのは家光が3代将軍になった3年後ということを考えると、春日局との暗闘で心身ともに疲れはて、寿命を縮めてしまったのかもしれない。

 亭主の秀忠が死ぬのは、それから6年後だ。
 年上の夫より何年も先に死んでしまうのだから、かわいそうである。


春日局の父は、江の運命を変えた明智光秀の部下

〝江の天敵〟春日局の本名は、平仮名で書くと「ふく」。江より5~6歳若かった。

 ふくは、政治力はあったが、美人という噂はまったく伝わっていない。

 したがって、「どんな漢字?」と聞かれたら、
 「福笑いの『福』、社民党の福島みずほの『福』」
 とでも答えるべきか。(みずほさんは才色兼備かな)

 福の父は明智光秀の部下で、本能寺での織田信長暗殺に関わっている。その後、秀吉と戦い、殺された。
 男の兄弟も殺されているが、福は女だから助かったのだ。
 
 江は、織田信長の妹お市の方の子供。
 だから、福は、いってみれば、一緒におじさんを殺した男の娘ということになる。

 父浅井長政の自害に始まり、母お市の方の自害と続く江たち3姉妹の波乱万丈の人生は、信長が光秀に殺されていなければ起きていない可能性がきわめて高い。

 にっくきは光秀。光秀が浅井3姉妹の運命を変え、人生を変えた張本人である。
 その光秀に付き従って、お福の父親は江のおじさんを殺した。
 そういう怨念のようなものが江のなかにはあったのではないか、と私はみている。


「浮気許さぬ潔癖症」の江姫VS「女で男を操る性治家」の春日局

 江は、亭主の浮気を許さない潔癖症で直球派。

 対する春日局は、口八町手八丁の技巧派。

 所詮、水と油。ドンパチ起きないわけがなかった。

 位(くらい)からいえば、将軍の正室の江の方がはるかに上で問題にならないが、大御所様の信頼を得てしまう春日局の老獪(ろうかい)さの前に、江は歯が立たず、女の戦いには負けてしまったから、腹の虫が納まらなかった。

 会社でもこういう女はいる。
 課長を無視して、直接部長にいいつけたりする女だ。
 
 春日局の場合は、COOである社長をすっ飛ばして最高権力者のCEOである会長に直訴したようなものなのだ。

 勝ち誇った春日の局は、男どもが立ち入れない大奥の制度を確立する。

 大奥などというと聞こえはいいが、〝政府公認の総理大臣専用の風俗〟のようなものである。

 春日局は、将軍家の後継者を残すためという名目で、「大奥」という名の巨大なハーレムをつくり、男たちをシャットアウトしておいて、自身の傀儡(かいらい)となった若くて美しい女たちを将軍に次々とあてがって寝間(ねま)で骨抜きにし、将軍の下半身を間接的に牛耳るという、銀座のママもびっくりの〝性治家〟の道を切り拓いたのが春日局なのだ。

 そうやって大奥に君臨することで幕府の権力中枢に入んだ春日局は、わが世の春を謳歌しつつ、江より15年以上も長生きするのである。

 最後に、なぞかけを一発。

 ○江とかけて、
  「季節の変わり目のOL」と解く。
  そのこころは?
  ふく(福/服)が気になります。

 (城島明彦)

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