「茶々が〝親の仇〟秀吉の側室になった理由――女たらしの極意とは?」を推理する(「江~姫たちの戦国」第12回)
NHK大河ドラマ「江」の第12回(4月3日)は、
「名家の血を引く美女に目がない秀吉が、茶々の気を引こうと、3姉妹相手にあの手この手の作戦を展開する。新しい着物のプレゼントの次は食べ物作戦だったが、3姉妹は拒絶。ハンガーストライキに入るので、お茶ならいいだろうと千宗易(千利休)に言い含める。その作戦が功を奏し、宗易のもっともらしい説教に簡単に3人娘は簡単にギブアップ。秀吉の次なる奇手は、何と一番年下の江姫を嫁がせるという作戦。さて、どうなりますか。次回をお楽しみに」
という内容だった。
NHKは熟柿作戦説
江たち3姉妹にとって、秀吉は、実父や義父だけでなく母親までも自害に追いやった憎っくき仇敵である。それなのに長女の茶々は、なぜ秀吉の側室になってしまうのか。
はっきりした理由はわかっていないのだから、推理するしかない。
NHKの解釈は、秀吉があの手この手で茶々がその気にさせ、ついには承知させる」という一種の〝熟柿(じゅくし)作戦〟説であるが、正しいとも間違っているともいえない。その説が説得力があるのかないのかというだけだ。
ただ者ではなかった秀吉
秀吉は不思議な男で、織田信長から「さる」とか「はげねずみ」と呼ばれたことからわかるように、百姓の出で、しかも醜男(ぶおとこ)だったが、それを生来のひょうきんさと知恵でカバーし、信長に目をかけられたのを契機として天下人(てんかびと)にまで成り上がっていくのだから、ただ者ではない。
いってみれば、手八丁口八丁の能弁家にして行動派。
現存する信長の手紙によると、秀吉の正室ねね(おね)が秀吉にはもったいないくらいの美人であると書かれている。そのねね(おね)と秀吉は恋愛結婚だったから驚いてしまう。
典型的な女たらし
秀吉は、女をものにする天性の才能があったのかもしれない。つまり、女たらしである。
女たらしの特徴は、女に対してマメなことだ。
秀吉は筆まめでもあった。今でいえば、メール魔、電話魔だ。その手で「これ」と思った美女に猛アタックし、陥落させるのである。
サルのような容貌だから女は警戒しない。しかも、ひょうきんなので、女は安心して気を許してしまう。そこがつけ目だ。
例を挙げると、もうは爺さまになったが、俳優の火野正平がそういうタイプだった。この男はひょうきんではないが、さる顔で、女にかけては実にこまめ。次々と美女をものにした。
ただ女をたらしこむだけではなく、誠意を見せた。それに女はコロリとくるのだ。
秀吉と家康の女の好み
女に対する好みは人それぞれで、家康は「バージンはめんどうだ」といって嫌っていた。家康は「年増好みで後家も大好き。顔は二の次」というところがあったのだが、秀吉は「超面食いでバージン大好き、若い娘大好き」だった。
家族思いで息子を溺愛
秀吉は茶々との間にできた息子秀頼を溺愛した。60歳近くになってできた子どもだから、よけいかわいかった。
秀吉が秀頼に宛てた幼児語を使った手紙が残っているが、それを読むと親バカぶりが手に取るようにわかる。
「パパがそっちへ行ってキスするまで、ママにはキスさせたらだめだよ」
といった内容のことが書かれているのだ。
キスといってもほっぺにするのではなく、「口吸い」と書かれているので口にチューするのだ。
こういう感じで女にも迫ったのかもしれない。
「しょうがない人ね。ちょっとだけよ」
といって女は受け入れてしまたが最後、次第に抜き差しならない関係にはまっていくというわけだ。
「プレイボーイ7か条」――秀吉は全部備えていた
プレイボーイの条件とは何か。それは7つある。
①女にこまめであること。こまめとは行動力であり、実行力である。めんどうくさいなどと思わず、「この女」と思った相手に対しては、あの手この手でこまめに動く。昔なら手紙。いまなら電話かメールを、相手の喜ぶタイミングで、せっせと出す。骨を折ることをいとわない。
②女に警戒心をいだかせないこと。これが大事だ。冗談をいったり、どこかぬけているようなことをしたりして、「この人は安全だ」「この人といると楽しい」と安心させる雰囲気をつくる術(すべ)にたけていること。
③ハンサムでないこと。ハンサムな男は警戒されるが、顔がよくないと警戒されにくい。ハンサムすぎると、ほかの女にもてる心配をしなければならない。中途半端に顔がいいのも、中途半端に顔が悪いのもダメ。ひょうきん顔とでもいうか、女に警戒させない程度のブサイクさが必要だ。
④女への気くばり上手。常に女の気をそらさない話術(口まめ・口上手)と言動を心がけていること。それは天性のもので、努力して身につくものではない。努力の「努」の字は、「女の又(股)の力を抜かせること」なのである。気くばりのなかには、相手の気を引くプレゼントがうまいことも含まれる。相手がほしいと思っているものをグッドタイミングで贈る能力が必要である。
⑤誠意。トコトン尽くすタイプであること。どんなにこまめに行動し、口でお上手をいっても、誠意が感じられなければ女はやがて去っていくが、騙されているかもしれないと思いながらも、誠意を見せられると去りがたい。
⑥何人もの女を手玉に取る術にたけていること。こっそりと二股、三股、四股をかけるのではなく、互いの存在をわからせながら、それぞれが敵対しないようにする操縦術にたけている。これは素質世もいうべきもので、ほとんどの部分、もって生まれたもの。
⑦女を離れさせない性力。男は最初のうちは女にせっせと奉仕するが、どんな美人でもその体に飽きてくるのが普通。結婚生活が長くなればなるほどそうなる。だが、そういうそぶりを見せずに性的なテクニックを駆使して徹底的に奉仕する。とにかく女が喜ぶことに生きがいを感じ、自分の自信を深めるタイプなのである。
秀吉は、これらの条件全部に当てはまるのではないか。
一番難しいのは何人もの女を同時に手玉に取ることだが、小田原攻めのとき、長期戦になって心身ともに疲れた秀吉は茶々を戦場に呼んだが、そのとき正室のねねに手紙を出している。
「一番お前が好きで、茶々は2番目だ」
などとぬけぬけと書く男。それが秀吉である。
(城島明彦)
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