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2011/03/17

どの市町村長も耐えているのに、「自分のところだけが差別されている」と繰り返す南相馬市の桜井市長の発言は、いかがなものか

 福島県の南相馬市の桜井市長は、あちこちのマスコミを通じて、

 「南相馬市は、放射能被ばく注意地域の30キロ圏内に指定されていることにより、輸送業者がそこからこちらへ来ない。差別され、孤立化し、支援がなされていない。放射能を測量した結果では問題ないのだから、国や東電は、『行っても大丈夫だ』と明言してほしい」

 と繰り返し声高に叫んでいる。

 原発から30キロ圏内にあることで不利益を被っており、国が「外出を控え、自宅退避するように」とした命令が気に食わないというのだ。

 気持ちはよくわかるが、外部からの輸送業者や域内の家屋に避難している人たちに対する放射能の被ばく量が今現在は軽微だからといって、外に出て自由に動き回ったら、30キロ圏という規制そのものが必要ないということになってしまう。

 危険な可能性もあるから、30キロ圏が設定され、屋内退避命令が出ているのである。
 桜井市長の頭から、そのあたりのことが完全に飛んでいる。

 そういうことをいう者に限って、万が一、事態が突然悪化して人身に被害が及ぶと、「なぜあのとき、外出するなと国や東電はいわなかったのか」といいかねない。

 「ガソリンがほしい」
 と彼が電話で発言しているときに映し出された南相馬市の映像では、家屋の前を車が何台も通っていた。
 壊れた家を片づけている人の姿も映っていた。

 テレ朝もいいかげんで、延々と語り続ける彼の話を流す間、ごく短い同じ映像を繰り返し繰り返し映し続けていたから、見た人は「何だ、車はいっぱい走っているじゃないか」と思ったに違いない。

 「スーパーモーニング」の鳥越俊太郎キャスターも、延々と同じ文句をいい続ける桜井市長の矛盾をはらんだ独演にさすがに辟易したのか、最後の方は困ったものだというような表情になっていた。

 アメリカはどうしたか。80キロ圏内を危険域とみなし、駐日の自国民に対し、圏外に出るようにとの命令を発しているではないか。
 現時点では安全であっても、30キロ圏がこれからも安全という保障はないのだ。

 テレ朝の前には、「みのもんたの朝ズバッ!」でも、彼は電話でまったく同じ内容のことを話していた。

 たくさんある南相馬市以外の近隣の被害地域の首長や住民は、救援が来るのをじっと耐え続けており、桜井市長ほど繰り返し、声高に、しかもあっちこっちのマスコミを通して感情的に文句をいっているところはない。

 自分のところだけが支援から取り残され、差別を受け続けている被害者であるかのようにいうのは、いかがなものか。

 それだけ文句があるのなら、なぜ直接、福島県や国や東電に陳情しないのか。

 国や県を説得し、動かすのが視聴の仕事ではないのか。

 彼は、NHK,TBSテレビ、テレ朝などからの電話インタビューを受け、窮状を訴え続けている。
 読売新聞なども、彼の発言を大きな記事にしている。

 そのことによって、尾ひれがつき、騒ぎが大きくなっている。
 ここまでやられたら、国も動かざるを得ないだろう。
 そういう作戦なのだろう。

 マスコミを通じて声高に訴えたら、30キロ圏内の規制が解除になるのなら、ほかの地区の首長たちも、われがちに文句をいい始めるかもしれない。

 そうなったら統制がとれなくなり、パニックになる。

 テレビも新聞も、「弱者の味方」という形で「国が悪い」という論調で報道しがちだが、そうすることによって、それまでじっと耐え続けてきた他地域の人たちの不満感情が連鎖的に爆発しかねない危険性をはらんでいる。

 マスコミは、そのことをよく考えて報道すべきである。

 (城島明彦)

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