久しぶりにいいドラマを見た「遺恨あり~明治十三年 最後の仇討~」(テレ朝)
2月26日(土)夜9時から放送された「遺恨あり 明治十三年 最後の仇討」(テレ朝)は、冒頭から最後まで内容が濃く、見ごたえがあった。
「史実を克明に調べ上げて小説にする達人」だった作家吉村昭の原作(『敵対』収載の「最後の仇討」)がしっかりしていることもあるが、演出も巧みで、よく描けたドラマだった。
見なかった人のためにいうと、もうじき明治という頃に屋敷で就寝中に暗殺された父母の仇を、時代が変わって「仇討禁止令」が出されたにもかかわらず実行して本懐を遂げるという実話に基づいた話である。
主人公の秋月藩(九州の小藩)の武士臼井六郎(うすいろくろう)には藤原竜也が扮し、熱演していた。
六郎の気持ちを知った上で剣道を教える山岡鉄太郎(鉄舟)に北大路欣也。
幼い頃、臼井家の下女として暗殺現場を目撃したことから、仇討をめざす六郎のために他人の妾になってまで六郎に資金援助と情報収集で援助するという、今の日本には絶対にいない女を松下奈緒が演じた。
どの役者もなかなか頑張っていたが、六郎を裁く判事役でナレーションもやっていた吉岡秀隆だけはミスキャスト。例のへなへなとした声と表情、くさい演技は、しらけさせた。別の俳優にやらせるべきだった。
吉岡の演じた判事は、六郎の父を暗殺した元秋月藩士の同僚。武士あがりのくせに、軟弱な雰囲気を漂わせていては話にならない。
くだらない報道番組より訴える力が何百倍も強いドラマになっていた。
しかも、テレビ局の考えを押しつけるのではなく、見た人それぞれが考えるような内容だった。
日本人とは何か。
日本人の鏡とされてきた武士道とは何か。
男の本懐とは何か。
価値観の変化とは何か。
欧米流の正義とは何か。それは日本に合っているのか?
自分の身を犠牲にしてまで尽くす女の美学は、なぜその後失われたのか?
(城島明彦)
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