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2011/02/02

受験シーズンを狙って、「一刻も早くすべりたい」という広告を打つ企業のセンスを疑う

 2月1日夜のこと、用があって地下鉄(東京メトロ)有楽町線に乗ったら、おかしな車内広告(中吊り)が目に入った。

 2枚並んだ左側の広告には、タレントのデーブ・スペクターの顔と「一刻も早くすべりたい」という大きな文字のキャッチフレーズがデカデカとレイアウトされていた。

 どういう意味だろうと思って、となりの右側の広告を見ると、ごちゃごちゃしたレイアウトの下に「としまえん」とあった。

 そこで初めて、「としまえんのアイススケートリンク」のことをいっている広告であることに気づいた。
 昔は「豊島園」といっていたが、いまは平仮名で表記するらしい。そうも思った。

 豊島園の夏のプール、冬のスケートリンクは昔からよく知られており、私もかつて行ったことがある。ここの回転木馬(メリーゴーランド)は100年以上前にドイツでつくられたものとして有名だ。

 だが、そのとしまえんの車内広告は、二重の意味でいいイメージを受けなかった。というより、悪趣味であり、人の気分を害するブラック広告であると思った。そう思った理由は、こうだ。

 その2日前(1月30日)、同じ都内にある別の遊園地(東京ドームアトラクションズ)のジェットコースターで死亡事故があったばかりで、いかにもタイミングが悪い。としまえんにも子供向けのジェットコースターがあるのだ。
 ジェットコースターはレールの上を走行する(すべる)のである。

 事故があった東京ドームの遊園地は旧名「後楽園遊園地」。豊島園と並んで有名で、私も何度か乗ったことがある。子供が幼児の頃、連れて行ったが、身長制限があって乗れなかったことがある。

 東京ドームのジェットコースターには「スピニングコースター舞姫」というシャレた名前がついているが、今回のように乗客が座席からスピンアウトし、空を舞って落下してしまうと、「舞姫」という優雅な言葉が一転して恐怖のイメージにつながる。ネーミングを変えないとダメだろう。

 としまえんの車内広告から受けたもう一つの悪印象は、受験シーズンであることを知っていて「すべる」という言葉を意図的に使ったと思えるやり方についてである。

 合格を祈願して神社に絵馬を奉納したり、「きっと勝つ」につながるからと「キットカット」を買って食べる受験生たちの「わらにもすがりたい」と思う純粋な気持ちを逆なでする広告コピーとしか思えないのだ。

 としまえんは、デーブ・スペクターがダジャレ大好き人間であるから「すべる」などという言葉はシャレだといいたいのかもしれないが、そんなふうに受け取れる余裕のある受験生などめったにいない。

 昔も今も、受験生や家族は、試験当日には特に縁起をかつぎ、「すべる」とか「落ちる」といった言葉は使わないようにしてきた。

 心ある企業なら、それくらいの配慮があってしかるべきではないのか。
 ましてや、としまえんは、子供に夢を売る商売であり、思い出づくりに貢献する企業である。
 
 広告を見た日の朝、私は「受験生の皆さんは、がんばってくださいね」といっているテレビ番組を見ていたので、よけい不快になった。

 受験生が試験に合格すれば笑い話ですむ話かもしれないが、もし試験に落ちたら「あの広告を見たのが悪かった」などと直接結びつけて考えないとも限らない。
 そういう受験生が、将来、自分の子供をとしまえんへ連れて行きたいと思うかどうか。

(城島明彦)

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