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2011/02/28

「江~姫たちの戦国」(第8回) お市の方は、江と同じファザコンだったから爺さん(柴田勝家)と再婚した

 お市は、娘3人を連れて兄信長の重臣だった柴田勝家の居城がある福井へ嫁ぐ。

 3人の娘は、勝家を新しい父と認めず、勝家もまた、父として接することができずにいたが、江がうさ晴らしに馬に乗って一人で遠出し、行方不明となって夜通し探すことになる。

 朝になって、戻ってきた江を勝家は平手打ちし、「もし江が戻らなかったら、厩番(うまやばん)の男は打ち首になるところだったんだぞ」といってその男に土下座して謝らせる。

 この事件がきっかけとなって、3姉妹と勝家の間の垣根が取り払われ、勝家を「父上」と呼ぶようになる。
 
 ――というのが、2月27日放送の「第8話」のお話。

 大地康雄扮する勝家は、亡き主君の姪っ子という意識から、妻となったお市の方や連れ子の3姉妹に敬語を使うなどして丁重に接していたが、「江、土下座事件」後、態度を一変させ、実の娘に対するように厳(いかめ)しく接するようになるという筋書きは、いかにも唐突で、とってつけたような感じで、違和感があった。

 それにしても、お市の方は、どうしてふたまわりも年の離れた爺さんの勝家と再婚したのか。
 
 お市は、秀吉が信長の家臣になったときから自分に憬れていることを知っていた。

 お市の方は、秀吉からみると、自分に目をかけて百姓から取り立ててくれた主君信長がかわいがっていた妹で、「当代一の美女」といわれた雲の上の存在のマドンナであった。

 秀吉が信長に使えたのは17歳ぐらいの頃で、そのときお市の方は7歳。秀吉はお市より10歳上なのである。

 秀吉は、本能寺の変で信長を殺した明智光秀を討つという功績をあげたが、お市は好きにはなれなかった。

 猿のような下品で貧相な顔。
 百姓あがりの粗野で品のない言動。
 あくが強い野心家。
 〝人たらし〟といわれる巧妙でわざとらしい人心掌握術。
 愛妻家ではあるが、無類の女好き。

 そういう秀吉をお市は生理的に受け付けなかったのではないか。

 江姫が生まれたのは、父浅井長政が死んだ年であり、彼女は父の顔を知らずに育ったが、お市もまた3~4歳で父織田信秀を亡くしているから、父の記憶はないに等しい。

 お市は信秀が40歳近い頃の子供である。
 信秀は短命で40歳を越えたあたりで死んでいるが、精力絶倫で、男女合わせて20人以上の子供をつくっている。

 そんなに兄弟姉妹がいるのだから、お市と3人娘が望めば受け入れてくれる兄弟姉妹があったはず。

 にもかかわらず、爺さんで、しかも兄信長の家臣だった勝家と再婚し、それまで一度もいったことのない福井間で行ったのは、なぜなのか!?

 お市も、江と同じく、父の顔を知らず、ファザコンだった可能性が強い。だからこそ、父親のような年齢の柴田勝家との再婚の道を選んだのだ、というのが私の説である。

 大河ドラマでは、江がおじの信長に父親の姿をだぶらせる設定になっていたが、そういう解釈は正しいと思う。

 お市が勝家に走った理由はほかにもある。

 信長が殺された後、柴田勝家と秀吉は、信長の後継者選びで対立したが、信長の三男信孝を推挙した勝家の案は敗れ、信長の孫の三法師(さんぼうし)を立てた秀吉の案が通った。
 これにより、秀吉は幼い後継者の後見人として政治の実権を握ることになる。

 そういうことがあった後で柴田勝家と再婚するということは、「お市は秀吉を受け入れない」「夫勝家ともども、どこかで秀吉と戦火を交えることになる」と宣言したのも同じである。

 「いくら乱世、下克上の世とはいえ、百姓上がりの成り上がり者に天下を思いのままにはさせたくない」
 という気持ちがお市にはあったのではないか。
 
 実際、勝家と秀吉は戦争(賤(しず)ヶ岳の合戦)をし、秀吉が勝って、勝家とお市は自害することになる。これが描かれるのは、大河ドラマでは次回とその次あたりか。

 秀吉はお市を救いたかったとされているが、お市が拒否。夫勝家とともに自害して果てるのである。お市は享年37(ぐらい)。
 
 秀吉は、そこまで嫌われていたのである。

 そのとき江ら3姉妹は助け出され、以後の数奇な人生が始まるのだが、江は10歳か11歳である。宮沢りえが演じている茶々は15~16歳で、水川あさみ演じる次女の初は13~14歳。
 
 ドラマで3姉妹を演じている女優たちとの年齢ギャップが、やはり気になる。

(城島明彦)

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