« 主婦は大桃に同情、麻木は〝したたかな女〟と思われ、タレントとしての危機に立った | トップページ | 「さかなクンさん」事件に対するNHKの対応の不自然さの裏に何があった!? »

2010/12/26

「さかなクンさん」は〝ネタ〟、目くじらを立てるなという批判が大量にあった

 体調を崩して熱をだし、寝込んでいた。少しよくなり、パソコンを立ち上げたら、「さかなクン」を「さんづけ」にすることについての私のブログが、どういう形で目に触れたのかは知らないが、大量のコメントが届いていた。12月25日の後半だけでアクセス数が1万件を超えるという異常事態だ。とんだクリスマスプレゼントになった。

 寄せられたコメントのほとんどは、「さかなクンさん」というのはネタであり、ジョークなのだから目くじらを立てるなといった批判である。さかなクンが、私が思っていた以上に人気があることも知った。
 彼は、言葉づかいや表現方法が変わっているが、絵も字もうまいし、腰も低い。彼のような一芸に秀でた人間が高く評価されるのは喜ばしいことだ。彼の意見については、NHKにそのうち聞いてみようと思う。

 コメントのほとんどは、顔の見えないことをいいことに傲慢無礼な言い方をしているものが多い。なかには傾聴に値するものもあり、そういう人とはきちんとメールで直接やり取りしたいと思うときもある。
 かような理由で、これ以後の書き込みができないようにした。こういうことはしたくないが、悪意に満ちた書き方をしている者があまりに多すぎる。

 こういう風にして、匿名性を武器にして下品な言葉を連ねて反論を集中させ、血祭りに挙げ、自分たちの考えに合わないものの記述を削除させようとするのであろうか。
 身元がまったくわからない相手からの度を超えたサイバー攻撃(非難中傷)にいちいち耳を貸している時間はない。真摯な気持ちでコメントしてくれたり、コメントしようとする人には申し訳ないが、 ほかの文章も書き込み禁止にする。

 大友克洋の「AKIRA」について言及しているコメンテーターも数多くいるが、私は遠い過去に一度だけアニメを見たことがあるだけで、詳しいことは知らない。

 敬称について、たくさんの人が関心を持っていることは悪いことではないが、こういう混乱を引き起こすのは日本の国語教育に問題があるのだろう。

 「ブログに書き込まれたコメントを読んでいないのではないか」というコメントがあったが、私は、niftyのブログ「ココログ」(有料)をずっと利用している。
 そこに書き込まれた第三者のコメントはniftyから私のメールアドレスに即、送られてくるので、すべてに目を通しているが、すべての意見に細かく応じているだけの時間的余裕はない。

 私は今、『ことば遊び練習帳――笑いながら日本語に強くなる本』(「ととのうか、ととのわないか」で日本語センスが決まる!)(仮題)という原稿を執筆中なので、今回の一件については、予期だにしなかったことであるとして加筆し、そこで反論することにしたい。『ことば遊び練習帳』は、お世話になっている編集者の方が考えてくれたタイトルである。

 お断りしておくが、この本を宣伝しようとする目的で、「さかなクン」のことをネタにしてブログに書いたわけではない。版元は現在未定であり、その編集者は引き受けてくれる版元を探しているところなのである。

 しかし、今回の異常とも思える反響を見て、こういうテーマに多くの人が強い関心と個性的なさまざまの意見を持っていることがわかり、もしかすると出版されたら売れるのかな、と思った。
 原稿は途中まで書いて、そのままになっている。折角完成させても、発売している出版社が見つからないということもあるからだ。先頃、出版社の副社長に「どうしても書いてくれ」といわれて書いた原稿を社長が「ダメだ」といって出版されなかった痛い体験をしている。

 今回寄せられたコメントのなかには、私が「団塊世代で、その世代はろくなことをしていない」というものもいくつかあったが、正確にいうと「団塊世代」とは一歳ずれている。〝プレ団塊世代〟である。しかし、大学へは一浪して入っているので、〝一歳下の団塊世代に同化〟してしまっているから、団塊世代にくくられても間違いではないだろう。
 団塊世代については功罪相半ばし、私はある出版社の編集者から『団塊世代の青春時代』を本にしたいといわれて長い歳月をかけて原稿にしたが、本にならなかったことがある。
 そういうことがあるから、言葉遊びの本も、出版社が決まってから全部を完成させないと、ただ働きすることになってしまう。水嶋ヒロのように、いきなり処女作が売れて億という金が入るというニュースを見て、「作家は儲かる」と思った人もいるだろうが、そういう人はごくごく一部である。圧倒的多数の作家連中は、本が売れず、苦しい生活を余儀なくされている。それが実情だ。

 今、電子書籍が話題になっているが、私のケースでいうと、最新の電子書籍の小説『けさらんぱさらん――小さな恋の物語』(いるかネットブックス)の売値は315円である。400字詰め原稿用紙にして80枚の作品だから、1枚(400字)あたり4円弱だ。『グッバイ! 戦闘服の少女』(いるかネットブックス)も、同じ値段である。
 これらは書下(かきおろ)しではなく、昔、小説誌に掲載されたものに加筆して電子化しているので、二次使用ということになる。「一粒で二度おいしいじゃないか」と思う人がいるかもしれないが、1冊売れると著者には10%の印税が入ってくるだけだ。100冊売れてたったの3150円にしかならない。電子書籍が1000冊、1万冊と売れることは、現在の状況下ではそうそうあることではない。
 何がいいたいかというと、ごくごく一部の人を除いて、作家なんて儲からない職業だということだ。

 儲からない職業の私が書いている日本語の遊びの原稿内容は、「ダジャレ・諷刺・小咄・謎かけ・とんち・語呂合わせ・川柳・狂歌・和歌・俳句・落書き・地口・軽口・回文・道歌・早口言葉・かぞえ歌・手まり歌・絵かき歌・歌舞伎・パロディ・ギャグ……ことば遊びのオンパレード。近松門左衛門から柳亭痴楽、金太の大冒険まで。そこへ著者の創作が加わり、微笑、爆笑、コンチ苦笑!? 前代未聞のことば遊び」といったことである。
 私のジョークに関するセンスを云々するのは、それを読んでもらってからお願いしたいが、現時点では出版されるという保証はないから、目に触れずに終ってしまうかもしれない。

 私は2chの愛用者ではないから、書き込みをしたことは一度もないし、今後も書き込むつもりはないが、必要なときには片っ端から読む。
 (今回、私の名を使った「早稲田大学出身で作家の城島明彦と申します。私の芸名を汚さないでください」という書き込みがあるが、誰かが勝手に書き込んだものであり、誤解を生じるので、こういうのは悪意があってよくない。それに、物書きの場合は、芸名ではない。筆名というのが正しい。別に芸名を汚すなどと思ったこともない。汚すほど自分が高名な作家でないことは、私自身が認識している。私は、ソニーのサラリーマンを30代半ばで辞めて以降、ただ文章だけを書いて(ときには講演や講義もし)細々と生活してきた〝売文の徒〟である。そのレベルの物書きに過ぎない)

 かつて『ソニー病』(共著)という本を書いたことがあるが、ソニー病という表現は、そのとき2chで見つけ、「うまいことをいう」と思い、出版社に提案し、そのまま書名にした。
 日本郵船の120周年記念本『船と船乗りの物語』を書いたとき、版元が倒産したが、そのときにも2chで調べた。当時の細かい内容は忘れたが、知り合いのフリーの編集者と雑談していたら、「とっくに終わった自分の仕事のギャラがまだ支払われていない」というので調べたのだ。
 どういうことが書かれていたかは覚えていないが、ほかにも何人かギャラ未払いの人間もいたので、私は版元の社長に「そういう噂があるが」というメールを送った。
 すると、「あらぬ風説が流れる可能性があるので、訴えることもしなければならなくなる」といったような文面の返事が来、私の印税が振り込まれてきた。同社が倒産したのは、それから間もなくのことだった。
 その本は、横浜にある日本郵船の博物館で長く売ってくれるということだったので、喜んでいたが、絶版になってしまった。その版元で仕事をしたたくさんの物書き、編集者、デザイナーは、ただ働きで終ったことを後になって知った。私は管財人の弁護士に電話して話を聞いた。

 その後、2chに「その版元の社長は、財産を事前に安全なところに移し、計画倒産した」という書き込みがあった。
 私は2chの匿名性を否定する者ではない。しかし、今回の「さかなクン」の件では、私自身のブログに書いているのであり、反論は大歓迎だが、それにコメントする際は、下品な言葉づかいや、たとえば「このアホ」といった書き方は遠慮してもらいたいと考えている。
 面と向かってはいえないような品性下劣な物言い、メールアドレスを明かすとマズイと考えるような中傷、書き手の文字変換ミスや校正ミスを含むちょっとした誤記とかケアレスミスなどを、あたかも鬼の首でもとったかのように指弾することは控えるのが礼儀だと考えるのは、私以外のブロガーでも同様だろう。

 日本語の遊びの原稿のなかに、寄せられたコメントを紹介するにしても、匿名では許可の取りようがない。匿名ということは引用OKと解釈することになるが、どういう職業の人で、どういう経験からそういう意見をいっているのかといったことを知りたいところである。

 私は、最近、「料亭気楽」という名で、知りあいの人が参加しているホームページにいくつかの小咄を書き込んだ。こちらの方は、芸名といってもよいかもしれない。
 料亭気楽が昭和30年代から40年代にかけて活躍した落語家「柳亭痴楽」の「綴り方狂室」のもじりであると気づく人は、かなりの年配だろう。
 柳亭痴楽の「恋の山手線」に習って、つくった拙作「家電メーカーづくし」。

   男はみんな、おっパイオニアキヤノンよね (※おっぱい好きよね)
   わたしのオツム おリコーじゃないけれど (※利口)
   おっぱいフジに発育中 (※無事)
   コニカミノルタ わたしのブラザー(※こんなに実った、ブラジャー)
   なさソニーで ありそなFカップ あら東芝しょ (※なさそで、どうしましょ)
   お日立短い おじいサンヨー じっくり三菱よいけれど (※老い先、さんよ、見るのは)
   おならをシャープっじゃ 車内混乱パナソニック (※プー、パニくるわ)

 なんだ、ダジャレはという批判もあろうから、多少真面目なものも。「やきものづくし」。

   人生(らく)ありゃ 九谷(くたに)もあるさ (※楽焼)
   オイラの財布にゃ お薩摩がない (※札)
   大谷変だ! 色磁器かけだぜ (※おお大変)
   常滑(とこなめ)上手な 若後家に (※床)
   有田ガネすられて 瀬戸際だ (※有り金)
   ど丹波で 伊万里に見てろは 伊賀痛い (※土壇場、今に、胃が)
   つらい浮き世の 信楽(しがらき)に (※しがらみ)
   備前も今も どが出ない (※以前、度胸)
   ここらで人生 織部いか (※降りべえか)
   死んだほうが 益子だと (※まし)
   心にしみるぜ 唐津ッ風 (※空っ風)
 
 ほかにも小咄を含めてダジャレやシャレもいっぱいあるが、ここではこれだけにしておく。
 こういうことも含めて日本語の面白さに関心のある人は、本になったら読んでほしい。
 (注)本ブログへのコメントは受け付けられない設定にしています。

(城島明彦)

« 主婦は大桃に同情、麻木は〝したたかな女〟と思われ、タレントとしての危機に立った | トップページ | 「さかなクンさん」事件に対するNHKの対応の不自然さの裏に何があった!? »