« 「さかなクン」に「さんをつけろ」という近頃の若者の日本語感覚の異常さと、それを認めたNHKのバカさ加減 | トップページ | 主婦層の反発を買う「桃」VS「麻」(大桃美代子VS麻木久仁子)不倫バトル »

2010/12/20

シャープ「ガラパゴス」とソニー「リーダー」と電子書籍『けさらんぱさらん――小さな恋の物語――』

 電子書籍読み取り機は、外国勢のアップルの「iPad」とアマゾンの「キンドル」が先行したが、ここに来てソニーが「リーダー」を、シャープが「ガラパゴス」を国内同日発売(12月10日)し、これにより日本でも、2010年が「電子書籍元年」ということになった。

 アメリカはタイプライターの国で、手紙を書くのも印刷された文字を使ってきたから、電子書籍を端末で読むことに岩感を感じないようだ。

 私は、日本語も英文のようにタイプライターで打ちたいと思っていたので、1980年頃だったと思うが、和文タイプライターを買って使い始めた。
 しかし、やたら時間がかかり、2、3年もすると個人向けのワープロがポツポツ出始めたのを見て、売った。

 小学生のとき、先生が刷って配ってくれるガリ版刷りの、手書きと違う魅力にひかれたものだった。
 高学年になって、学級新聞のようなものを手伝うことになって初めて自分で鉄筆を握り、油紙にガリガリと字を書いた。親父が教師をしていたので、家で試験問題をガリ版で作っているのを何度も目撃していて、やらせてほしいとたのんだことが何度もあったが、許してもらえなかった。

 だから、学校の教室で放課後に初めて鉄筆を握ったときは興奮した。

 大学生になって、友人と同人雑誌をガリ版を使って印刷し、売った。

 雑誌や新聞の活字は、ガリ版とは違った高みにある憧れであり、 自分の書いた文章が活字になるということは夢のまた夢という感覚だった。

 しかし、今は誰でもパソコンを使って自分の書いた文章を活字にできる。だから、活字に対する憬れなどというものは失せてしまったのかもしれない。

 本が売れない、未曾有の出版不況という現象のいちいんは、そういうところにもあるのかもしれないと、ふと思う。

 ソニーとシャープが同時発売で思い出すのは、電卓である。1964年3月に同社は世界初の卓上型電卓を発表したのだが、その後、ソニーは撤退し、シャープはIC電卓の開発に成功し、のちの電子手帳のひとつに結びつけるのである。
 対するソニーは、ICつまり半導体の生産そのものから撤退し、パソコン進出に遅れをとることになった。

 当時はエレクトロニクス業界に〝3S〟が存在したが、サンヨーの自滅で、日本の電子書籍端末市場は2Sがリードして行くことになるのかもしれない。

 我田引水ではあるが、シャープとソニーが電子書籍専用端末を発売した1週間後に、私の電子書籍『けさらんぱさらん――小さな恋の物語――』がたまたま発売された。

 これは、私がソニーに在籍していた時代(正確にいうと1983年)に文芸春秋の小説誌「オール讀物」の新人賞を受賞した短編小説であり、発売時期のタイミングをひそかに喜んでいる。
 自慢めいたことをいわせてもらうなら、この入賞で私は、まがりなりにも、ソニー史上初の文学賞受賞者ということになった。

 入賞作品の題名は「けさらんぱさらん」だけだったが、今回、電子書籍化するにあたって、内容をわかりやすく伝えるためにサブイトルを加えた。
 400字詰め原稿用紙にすると80枚になるその話は、簡単にいうと、「三流の電気会社の宣伝マンと七色の声を持つ女性DJが、『けさらんぱさらん』を介して展開するラブストーリー」である。

 「けさらんぱさらん」というのは、動物なのか植物なのかよくわからない伝説上のナゾの生き物で、タンポポの白い羽毛のような形状をしており、おしろいを食べて成長し、子孫を増やすといわれ、これを持っている者は幸せになれるという。
 私は、これを「ケ・サラン・パサラン」という古代のスペイン語だとし、「何かが来る、何かが通り過ぎる」という意味であると設定した。

 この短編はこれまで拙著には収載されなかったから、雑誌掲載時に入選作を読んだ人以外は読めなかったが、今回電子書籍になったことで気軽に読んでもらえることになった。

 短編小説や掌編小説は枚数が短いために、これまでは、それ単独では本にならなかったが、電子書籍の時代になって単独で発売できるようになった。これも、電子化による出版革命といえるかもしれない。
 以下はPR.。電子書籍「けさらんぱさらん」(いるかネットブックス)は315円。

Photo_2

(城島明彦)

« 「さかなクン」に「さんをつけろ」という近頃の若者の日本語感覚の異常さと、それを認めたNHKのバカさ加減 | トップページ | 主婦層の反発を買う「桃」VS「麻」(大桃美代子VS麻木久仁子)不倫バトル »