ソニーが考える「ソニーらしさ」に失望
NHK総合テレビの「BIZスポ」(5月14日金曜日)が、「ものづくり」のテーマでソニーを取り上げたので、「何か新しいものを開発したのか」と期待してみたら、「望遠レンズ付きデジカメ」を小型軽量化したというだけ。
ソニーの考える「ソニーらしさ」だと開発チームの統括部長は胸を張っていたが、もし本心からそう思っているとしたら、消費者の考えるソニーイメージとは大きな隔たりがある。
消費者の考える「ソニーらしい商品」とは、iPodやiPadのような、それまで市場になかった商品。
このデジカメは、ソニーらしさは備えてはいるが、「これがソニーを代表する商品」と主張したら、「この程度か」と消費者の失望を買うだけ。
ソニーほかエレクトロニクス各社は、前日、そろって決算を発表し、いずれも営業黒字を達成している。
ソニーは売上減で営業黒字だからリストラ効果依存体質であり、まだ本格回復とはいえない。
デジカメに見られるような考え違いをしているから、株価も下げる。
CEOの名をつけた〝ストリンガー改革〟なるものは、リストラによる効果しか見るべきものはない。
NHKの取り上げ方にも疑問がある。なぜ、こんな商品を取り上げるのか。ソニーに頼まれて、決算発表直後のイメージ戦略株価対策にNHKが協力したのではないか。
この番組は初めて見たが、この日に関する限り、極めて安易な造り方で、大学教授やらシンクタンクの関係者やらの〝井戸端会議レベル〟〝雑談的〟な内容に終始しており、視聴者を舐めている。
あるメーカーの顧問の肩書きで出ていたコメンテーターなど、「東レの炭素繊維」とか「パラダイム・シフト」という20年以上も前の用語を平気で使っていた。
もう少し事前にきちんと調べて、少しは目新しいことを発言したらどうか。
最近のNHKは、予算削減のためか、この手の安易な番組作りが増えている。どういう人選なのか知らないが、「さすがNHK」という発言ができる人間をそろえたらどうか。
司会者たちのやたらはしゃぐ姿だけが目についた。
制作の連中が、内容の親しみやすさをレベルの低さと勘違いしているのか?
(城島明彦)