「普天間基地問題」の解決法は「日本の核軍備」
沖縄普天間基地では、いろんな人がいろんなことをいっているが、それらの議論や主張で抜け落ちている共通項がある。
基地の移転先を「県外」とか「国外」というのは簡単だが、そうすることで日本の国防力がどう変化するのかについての議論がなされていない。
議論されているのは、これまで、沖縄の駐留米軍が近隣諸国からの侵入を「抑止」することで、アジア、太平洋地域の平和を維持できているという程度のことである。
中国、ロシア、北朝鮮を仮想敵国として、一触即発の危機が勃発した場合のシミュレーションは、防衛省や自衛隊で当然やっているはずだが、そういう具体的な話を少しもせずに、ただ米軍基地の県外移転だの国外移転などときれいごとをいっても、説得力に欠ける。
だから、諸外国からバカにされるのだ。
長い間、米軍の核の下に庇護されて生きてきたために、鳩山由紀夫や小沢一郎や岡田克也らは、そろいもそろって平和ボケした外交オンチだ。
テレビ番組も、内閣支持率だとか、基地候補地とされる土地の住民の反対運動を取り上げるだけで、
「もし沖縄から米軍が撤退したら、日本の安全保障はどうなるのか。基地がどこそこに移動した場合、アジアのミリタリー・バランスはどう変化するのか、日本の安全はどうなるのか」
といった重要な問題を、具体的な詳細なデータを示して検討することをしない。
米軍が日本から完全撤退したとして、その不足分を自衛隊で増強しても、核を持つ中国や北朝鮮が日本を攻撃してきたら、日本は滅ぶ。
日本は島国のせいで、幕末になるまで、元寇以外に異国の軍隊に攻め込まれたことがなく、「侵略される」という意識が希薄な民族である。
そういう国が外国を侵略しても、成功するわけがない。古くは、白村江の戦い、秀吉の朝鮮出兵……、新しいところでは太平洋戦争の引き金となった中国大陸への侵略もそうだ。
日本は太平洋戦争で負けるべくして負けた。
それから11年後に「経済白書」に書かれた「もはや戦後は終わった」という文言はあまりにも有名だが、平成22年の現在に至るも、まだ戦争も占領も終ってはいない。日本各地には、まだ米軍が駐留しているではないか。
日本の平和憲法は理想的だが、国防意識を希薄にさせたマイナス要素も色濃く含んでいる。
昭和30年代後半から40年代前半にかけて、日本が驚異的な高度経済成長を成し得た大きな要因の一つに、軍事費に金をかける必要がなかったことが挙げられる。
米軍に撤退してもらいたいのなら、それを補うだけの軍備を増強しなければ、国の安全は保証されない。
もし仮に中国や北朝鮮を圧倒する軍備力を日本が備えたとしても、抑止力とはなりえない。
北朝鮮のような狂気の国を相手にするには、核がなければ意味を持たない。
そこに日本のジレンマがある。
「非核三原則」などと、きれいごとをいうのは簡単である。
日本は戦争をしないと宣言したといっても、それは日本の勝手な言い分にすぎない。
「敵国がそんなことは知らない」
といって攻め込んできたら、それまでだ。
圧倒的多数の日本人には、そのあたりの感覚が欠如している。
拉致問題で北朝鮮に舐められているのは、日本の軍事力を脅威とは感じていないからである。
日本はというと、
「北朝鮮は核を持っているから怖い。刺激するな」
と考えてしまうから、強硬に出られない。。
これが、抑止力である。
日本がもし核を保有していたら、北朝鮮の態度はまったく違ってくるのではないか――そう思っている日本人は決して少なくないはずだ。
人が嫌がるゴミ焼却炉にしても、騒音に悩まされる高速道路にしても、誰かが、どこかが犠牲になってきた。
自分の住んでいるところに、基地ができて喜ぶ住民は皆無だ。
だが、基地がなくなって、安全性を脅かされるのは沖縄、九州など大陸や朝鮮半島に近い場所である。
沖縄は、太平洋戦争の戦場となり、終戦後も米軍統治下に置かれ、佐藤内閣時代の昭和47年(1972年)5月15日に返還されるまで住民はつらい思いをしてきた。
これ以上、がまんを強いるのは酷だが、中国や北朝鮮などの国から「絶対に侵略しない」という100%の保証を取り付けない限り、どこかが犠牲にならないと日本の安全は保障されない。
グアムだのテニアンだのと外国の土地を代替地に挙げるのは自由だが、現実性はあるのかということ以外に、
「アジア・太平洋地域の安全保障、日本の国防上の観点から見てどうか」
ということも考慮に入れなければならない。
沖縄県知事や候補地とされている町村地区の長は、ただ反対するのではなく、「アメリカが軍事的に納得できる、実現可能な具体的な代替地」を挙げて反対しなければいけない。
鳩山首相らが〝外交オンチ〟〝軍事オンチ〟と小バカにされるのは、そういうことをしないからである。
鳩山ブレーンも、評論家としては一流だが、机上の空論ではアメリカの失笑を買うだけだ。
(城島明彦)