恩義が金に負けた! FAで中日を出る中村紀洋の悲しき性(さが)
中村紀洋が(旧)近鉄を追放され、それがイコール球界からの追放を意味したとき、彼を拾ってくれたのは中日ドラゴンズだった。
中村自身もそう思い、マスコミにもそう語っていたので、彼はドラゴンズに骨を埋めるものだと思っていた。
ところが、「来期の3塁のポジションを確約されなかった」のを理由にFA宣言し、2億円を用意した楽天に移る可能性が高くなってきた。
全試合出場したいのは、どの選手も同じ。後輩が育ち、自分のポジションを脅かすのは勝負の世界の常道。
そういう連中を退けてしまうような凄い成績を上げるのが、名選手。ポジションは自分で奪うもの。
中村は自信がない、と思われても仕方がない。
中村は、中日への恩義を捨て、カネに目がくらんで出て行く。
中日ファンは、そう思っている。
中村が球界のどこからも声がかからなくなり、ドラゴンズが彼を拾ったドキュメンタリーを、私はかつてテレビで見、そこで見せた中村と妻や娘たちの姿に胸を熱くした。
2008年も、「中村がホームランを打つ試合では中日は負けない」といわれるくらい、彼は中日に貢献したが、やはり、金の力には勝てなかったのか。
「金(契約金や年俸)は選手としての自身の評価である」ということを理解してなお、「中村紀洋という男は、人情や義理を大事にすると思っていた」中日ドラゴンズファンの気持ちを裏切ったことだけは確かである。
(城島明彦)
