KDDIは、言葉に関わる商品を売っているという自覚がない
KDDIの「ら抜きCM」は、ひどすぎる。
携帯電話(AU)のCMで使っている「つながれる」という奇妙な言い方は、日本語にはない。
「言葉に関わる商品を売っている会社」であるという自覚がない。
家族みんなと「つながれる」とか、「もっとつながれる」などとCMではいっている。
間違った日本語を使うCMを、平気で垂れ流させているKDDIの社長や宣伝担当役員の知的センスを疑う。
「少しは、ソフトバンクの『しゃべる犬CM』の正しい日本語を見習え!」といいたい。
「つながれる」を「つなぐことができる」という「可能形」として使っているらしきことはわかるが、完全な誤用。聞く者を不快にさせる。
不快なCMは、企業イメージを下げこそすれ、上げることはない。
「電話と電話がつながる」という表現はあるが、「電話と電話がつながれる」という表現は日本語にはない。
KDDIのCMは、「つなぐ」という言葉と「つながる」という言葉を混同し、しかも間違った言い回しにして使っている二重の点で救いがたい。「
「つながる」は、「一つになる」または「拘束される」といった意味であり、「つながれる」は、「(人が)獄につながれる」とか「(家畜が)縄につながれる」といった使い方をする。
つながれるは、「自由を奪う」意味であり、プラスイメージの言葉ではない。そういう認識がKDDIにはないのだろうか。
正しくない日本語を、影響力の大きいテレビで、しかも頻繁に流すのが問題。
間違いを承知で、話題性を狙って意図的にやっているとしたら、つまり「確信犯」なら、あまりにもお粗末。KDDIは三流以下の会社というべきだろう。
「家族みんなとつながれる」という日本語も、細かいことをいうと、ニュアンスはわかるが、使い方としては微妙。
別の家の家族みんなとつながるという意味なら、これでよいが、自分の家の家族みんなとつながるというのはおかしい。電話をかけている本人を除いたほかの家族のメンバー全員とつながるのである。
問題は、こういうことを理解した上でCMを作ったかどうかだ。
「かたいことをいうな、たかがCMじゃないか」
という人もいるだろうが、CMだから、かたいことをいわなければならないのだ。
「食べれる」という「ら抜き言葉」もテレビのCMで一挙に広まった。
テレビCMは、小さい子供がまねをする。CMは金さえ出せば、いくらでも放送できる。誤記・誤用のたぐいであっても、極論すれば、金の力で日本語を変えてしまうこともできる。
そういう自覚がKDDIにあるのかどうか。
日本語を乱している最大の元凶は民放。特にCMとバラエティ番組。
「何気に」というわけのわからない言葉も、いつのまにか広まったが、これもテレビに出てくるお笑い芸人たちが広げた。NHKの若い女性アナウンサーが使っているのを聞いたときには、さすがに驚いた。
注意して使わせないようにすべきプロデューサーやディレクター自身が、おかしな日本語を使っているのだから、テレビの日本語が乱れるわけだ。
「おいしい」というべきところを「うまい」という若い女性タレントが多くいる一方で、両親にでも注意されたのか、きちんと「おいしい」というタレントも増えてきた。
「おいしゅうございます」といえ、とまではいわないが、せめて女性は「うまい」といわず、「おいしい」といってもらいたいものだ。
テレビ番組に関わっている人は、人々に与える影響が大きいということをもっと自覚してほしい。
「日本語は時代とともに変わるもの」
と言語学者はわかったようなことをいうが、たとえ話でいうと、
「インフルエンザが自然な状態で流行するのと、誰かが病原菌をまき散らした結果、流行するのとは違う」
ということを、彼らは認識していない。
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(城島明彦)
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