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2008/05/20

立原道造の「麦藁帽子」

 五年ほど前に出た「ハルキ文庫」の「立原道造詩集」に目を通していたら、「麦藁帽子」という一篇が載っていた。

 私が大学生の頃、とても気にいっていた彼の詩のひとつだった。

 「麦藁帽子」には、いろいろな思い出がある。次のエピソードもそのひとつだ。

 今は夏になっても、麦藁帽子をかぶっている人をみかけることはめったになくなったが、昭和の時代までは夏の風物詩であった。

 私が中学生だった頃、夏の日盛りに、町の停留所で、バスを待つ水玉模様のワンピースを着た美しい女性を見たことがある。

 高校生か、それより少し上であったろうか。すらりと背が高く、色白の清楚な感じの人で、鍔広(つばひろ)の麦藁帽子をかぶっていた。
 
 私は、彼女と道路を挟ん反対側の停留所で、同じくバスを待っていた。手には白い昆虫網と籠。

 強い日差しが照りつけ、麦藁帽子の鍔(つば)が彼女の白い顔に陰を落とす様を、私は、まぶしく見つめていた。

 その人を見たのは、それが最初で最後であった。

 立原道造の「麦藁帽子」は、こんな詩である。


   八月の金と緑の微風のなかで

   眼に染みる爽やかな麦藁帽子は

   黄いろな 淡い 花々のやうだ
 
   甘いにほいと光とに満ちて

   それらの花が 咲きそろふとき

   蝶よりも 小鳥らよりも

   もっと優しい愛の心が挨拶する

 
  「立原道造は、いいなあ。最高だ」
   と思う。

(城島明彦)

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