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2007/08/15

本当にあった不思議な話

 大学3年の4月半ばのある晩のことだった。
 
 僕は、部屋の外の廊下のあたりで「お兄ちゃん」と呼ぶ祖父の声を聞いた。

 時計の針は、午前零時を過ぎていた。
  
 僕には妹が一人おり、妹や祖父母からはそう呼ばれていたから、何の不思議もなかったのだが、そこは自分の家ではなかった。東京・高田馬場の下宿であった。

 部屋と廊下は、ふすま一枚で仕切られていた。

 僕の祖父は、その10日前に他界しているので、祖父の声と思ったが、そうではなく、別の部屋に下宿している学生二人のどちらかが僕のことを呼んだのだと思い直し、二人に「今、呼んだか」と聞いた。

 しかし、二人とも「呼んでないよ」ということだった。

 考えてみれば、彼らが僕を「お兄ちゃん」などと呼んだことはそれまでに一度もなかった。

 祖父が亡くなって以後、祖父の声とおぼしき声で「お兄ちゃん」と呼ばれたのは、それが最初で最後である。

(城島明彦)

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