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2007/08/14

これも、本当にあった怖い話

 これは、僕がまだ小学生だった頃の夏休みの出来事です。

 お盆が近づき、当時住んでいた三重県の田舎の村で、墓地の草むしりや掃除をしたときのこと。

 各戸一人が行くことになっていたらしく、わが家では僕が参加しました。

 バスが通る広い道の坂を登ったそばに墓地はありました。

 行って見ると、子供は僕一人でした。

 墓地の端に、石かレンガかは忘れましたが、それらで作った焼き場が設けられていました。

 刈り取った草や供花用の古い竹筒などは、その前で燃やしました。

 その墓地へ行ったのは初めてだったので、わが家の墓がどこにあるのかわかりませんでした。

 祖父母は、折りに触れて「先祖は百姓だが郷士(ごうし)であり、名字帯刀(みょうじたいとう)を許されていた」と自慢しておりましたので、さぞや大きな墓だろうと思って墓石を探しました。

 ところが、いくら探しても見つかりません。

 親戚のおじさんに尋ねると、その隣のがそうだといわれ、驚いてしまいました。

 大きな石ころのようなものがおいてあるだけだったのです。

 どこからどう見ても、ただの石でした。

 そんな墓は見たことも聞いたこともありません。

 ほかの人は、墓石に水をかけて洗ったり、周囲の草をむしったりしていましたが、わが家の墓はそういうことができる墓ではありませんでした。

 僕は恥ずかしさにじっと耐えながら、焼き場の前で草や竹筒を燃やしているのを、ぼんやりと見ていました。

 火勢(かせい)が強くなると、竹がポンポンと音をたててはじけました。

 それからしばらくして、「パーン」と大きな音がしたかと思うと、一本の竹筒が僕をめがけて飛んできたのです。

 竹筒は僕の目の前で落下しましたが、顔に水がかかりました。

 水といっても、活けた花が腐ってどろどろになった水です。

 僕はとっさにシャツの袖でぬぐいましたが、気持ち悪さはぬぐいきれませんでした。

 「大丈夫か」と声をかけてくれた村人は誰一人としていませんでした。それどころか、失笑したのです。

 僕は深く傷つきました。そのときの気持ちは今もはっきりと胸に焼きついています。

 家に戻ってから、墓がなぜないのか、と祖母に聞くと、「先祖の墓は、戦前まで住んでいた広いお屋敷のなかにあった。おじいちゃんが浄土真宗から日蓮宗に改宗したので、その墓とは別に先祖の墓は浄土真宗の寺にある」とのことでした。

 祖父がなぜ改宗したかというと、屋根から落ちてあばら骨を数本折ったとき、医者から見放されたことがあったそうですが、そのときワラにもすがる思いで、誰かにいわれたことを信じて、「南無妙法蓮華経」と唱えながら、あばら骨を力いっぱい押すと、音を立てて骨が元の位置に収まり、助かったからだそうです。

 昔あった焼き場は今はありません。

 わが家では、4年前に祖父が亡くなったとき、その墓地に新しい墓を作ったので、昔の石ころはもうありません。
 
 祖母や父もそこで眠っています。
  
 父が死んだ後、母はふたたび浄土真宗に改宗し、現在に至っています。

 (城島明彦) 

 

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