わけのわからない日本語を流しているCMがある。
「マネーにもマナーを」だと。
バカじゃなかろうか。こんな日本語がどこにある。
某消費者金融のテレビCMだが、このCM、したり顔で間違った日本語を正しくしたつもりになっているから始末が悪い。
しょこたん(中川翔子)扮するウェイトレスが若い男の客に、、
「ドリアのほうでよろしかったですね」
といわせて、その言葉をわざわざ画面に表示し、「ほうで」と「かった」の二箇所に×印をつけ、
「ドリアでよろしいですね」
と訂正する。
これで正しいと思っているところが、相当バカである。
このCMはオンエア(放映)前に社長や役員も見ているはず。
それなのに、間違った日本語を使っていることに誰も気づかないとは、情けない企業だ。
「ドリアでよろしいですね」
という場面を考えてみるがいい。
「何にいたしましょうか」
とウェイトレスが客に尋ねたか、あるいは何も尋ねなかったかの二通りの場合が考えられる。
で、客は、
「ドリア」
と注文したはずだ。
CMでは、それを聞いたウェイトレスが、
「ドリアでよろしいですね」
と客に念押ししているのだ。
この言い方には、
「本当にドリアでいいのか。ほかのメニューにしたら」
という余計なお世話的なニュアンスが含まれている。
客が「ドリア」(でいい)といっているのに、「それでいいのか」(よろしいですね)と念押しする店がどこにある。
「ドリア、うけたまわりました」
あるいは、
「ご注文を確認させていただきます。ドリア」
でいいのだ。
「ドリアですね」
でもOKである。
「ドリアですね」という言い方には、「わかりました」というニュアンスが含まれ、客への確認とウェイトレス自身の確認という二つの意味を兼ねている。
この会社、もっとバカなCMを流している。
「割り箸は縦に割るのではなく、横にして割るのがマナー」
だと。
こういうのを枝葉末節という。
割り箸を縦に割ろうが横にして割ろうが、どうということはない。
若者がわきまえなければならない重要なマナーは、ほかにもっとあるだろうが。
そういえば、コンビニで弁当と雑誌を買ったとき、レジの女の子が、
「(弁当と雑誌を)一緒に入れて結構ですか」
と奇妙な日本語を使うので、
「一緒に入れても構わないですか」
あるいは、
「一緒にしてもいいですか」
そういいなさい、と注意したことがあった。
「同じビニール袋に入れていいか」
と、彼女はいいたかったらしいが、無理に敬語を使おうとして、わけのわからない日本語を口にしたらしい。
その女の子は、その次行ったとき、私の前の客に、また同じ言葉を口にしていた。
私の番になって、私の顔を見て前日のことが頭をよぎったのだろうか、その子はぎょっとした表情を浮かべ私には何もいわなかった。
改めようという気にならない限り、いつまでたっても正しい日本語は使えないのだ。
(城島明彦)