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2006/06/13

「幸せって何だ?!」――(番外編)杉山登志

 城島明彦が書いているブログ「幸せって何だ?!」に、杉山登志のことを取り上げたら、一日にたくさん訪問者があり、驚きました。
 どこかの大学で彼のレポートを出すようにでもいわれたのかと思いましたが、彼のことを知りたい人がたくさんいると解釈して、もう少し書き足すことにしました。

杉山登志の自殺の原因は何か?

(1)「鬱病」説
 杉山登志は、〝鬼才〟とか〝CM界の黒澤明〟といわれた人です。
 彼はきわめてナイーブな神経の持ち主であり、〝先天的な欝気質〟があったのではないでしょうか。
 そういう気質があると、ちょっとしたきっかけで〝死の誘惑〟にとりつかれることがしばしばあるのです。
 なぜそんなことがいえるかというと、筆者自身がそうだからです。

(2)「女」説
 杉山登志は、売れっ子のイラストレーターとあるモデルをめぐって、血みどろの奪い合いをしたことがあります。
 有名な話で、杉山はその女と婚約していたのですが、そのイラストレーターに寝取られてしまったという事件です。杉山の繊細さに彼女は息苦しくなったのではなかったでしょうか。
 杉山登志は一度結婚していますが、すぐに破綻し、死んだときは独身でした。
 その元妻の証言に、こういうのがあります。
 杉山が死んだという情報がもたらされたとき、ロンドンにいた彼女は、「やっぱり」と「まさか」の相反する二つの言葉を口にしたというのです。田原総一郎が追悼本に書いている話です。彼女の談話は、こうなっています。

「彼、音楽聞いている最中などに、突然、一緒に死んでくれるか、とわたしに聞いたりして……。真剣な顔なのよ。わたしが驚いて、返事に困っていると、すぐにやさしい笑顔になって、冗談だよ、ってね」

 この話から太宰治を連想する人もいるでしょう。
 太宰は、何度も心中未遂をした挙句、最後は既遂ということになりました。
 太宰も明らかに欝病質であり、何かの拍子に〝死の誘惑〟を受け続けたのでしょう。
 死の誘惑を断ち切れるかどうかは、自分自身が「もうこれで十分だ」「おれは、やるべきことはすべてやり尽くした」と判断できるかどうかによると筆者は考えています。
 太宰治や杉山登志は、おそらく、そう判断したのでしょう。
 死にたいと思いながら、のうのうといき続けるのは、「まだやり残していることがある」と考えるからですが、「そういう未練など、どうでもいい」と思うときがあります。
 そうなったとき、人は「発作的に」自死の道を選ぶのです。

(3)「会社内のゴタゴタ」説
 杉山登志は、日本天然色(通称「日天」)の役員(専務)でした。経営陣の一員であると同時に演出家でもあったのです。
 そこにジレンマが生じ、加えて、部下のクリエーターたちと社長たちとの間で板ばさみになる立場にあったと推測できます。
 〝きれいな〟コマーシャルを作っている一方で、社内にはいろいろ〝汚い〟問題があったといわれています。
 今日では、一流のCMディレクターは破格のギャラを取っていますが、当時の社員ディレクターの給料は安かったのです。その割に仕事はハードで、会社にこき使われている状況でした。
 その結果、社員に不満が鬱積し、杉山はつらい立場にいたのです。
 杉山登志の遺書にある「嘘をついてもばれるものです」という言葉の裏には、こういう現実があったのです。

 〝当代一の売れっ子CMfディレクター〟だった杉山登志が、37歳という若さで自死の道を選んだ原因は、これら複数の原因が重なっての結果だと考えるのが自然でしょう。

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