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2006/05/02

「幸せって何だ?!」―(2)幸せは遠い山の向こうにある

 「幸せ」をテーマにした「山のあなた」という題名のカール・ブッセの詩は有名で、人口に膾炙(かいしゃ)していますが、改めて紹介しましょう。
   山のあなたの空遠く
   「幸」(さいわい)住むと人のいう
   噫(ああ)、われひとと尋(と)めゆきて
   涙さしぐみかえりきぬ
   山のあなたになお遠く
   「幸」住むと人のいう
 カール・ブッセはドイツ人で、原詩はドイツ語で書かれていますが、上田敏(うえだびん)がそのまま直訳していたら、おそらく評判にはならなかったでしょう。
 カール・ブッセの詩は文学史的には「象徴詩」と呼ばれていますが、訳は完全な意訳です。
 大胆な意訳によって、詩は原文とは異なるリズミカルな七五調に変身を遂げ、不朽の名作となったのです。
 上田敏のセンスによるところ大です。
 この詩が今日に至るまで長く愛唱されてきたのは、音読することで感じられる美しい日本語としての魅力もさることながら、「幸せは、遠い遠いところにある」という内容が人々の共感を呼んだからでもあります。
 カール・ブッセは、幸せはそう簡単につかめるものではないといっているのです。
 上田敏は、明治から大正時代に生きた東京帝大(現東大)出の学者です。
 彼は帝大の大学院に進み、そこでラフカディオ・ハーン(小泉八雲)から教えを受けています。
 小泉八雲は、「耳なし法一」「雪女郎」などの怪談を書いた人です。

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