義経(5) 『怪し不思議の物語』番外編 「静御前はアレンジャー」
義経の愛妾(あいしょう)だった静御前(しずかごぜん)は、頼朝に強要されて、鎌倉の鶴岡八幡宮の舞殿(まいでん)で、歌を歌いながら舞(まい)を舞った。そのとき静御前は、義経の子を宿していた。
●しづやしづ しづのをだまき 繰り返し 昔を今に なすよしもがな
●いにしえの しづのをだまき 繰り返し 昔を今に なすよしもがな
最初の歌が静御前が歌った歌で、後の歌は『伊勢物語』に出てくる歌だ。
替え歌のようなもので、一見して模倣とわかる。
静御前は、白拍子(しらびょうし)という芸人である。
子供のころから、母親から芸事を仕込まれたので、過去の有名な歌をたくさん知っていた。それらをうまくアレンジするのが得意だっただけで、創作力はなかった。
静御前は、頼朝の前で別の歌も歌ったが、これも『古今和歌集』からのパクリ。
最初の歌が静御前で、後の歌は『古今和歌集』にある歌だ。
●よしのやま 峰の白雪 踏み分けて 入りにし人の 跡ぞ恋しき
●みよしのの 山の白雪 踏み分けて 入りにし人の おとづれもせぬ
紫式部や清少納言といった才女とは、レベルが違っていた。
(詳しく知りたい方、興味のある方は、城島明彦著『裏・義経本』をご覧ください)